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第11回『このミステリーがすごい!』大賞に応募することにしました

突然ですが、Jeriは、来年5月応募締切の第11回『このミステリーがすごい!』大賞に応募することにしました。
http://konomys.jp/

あくまでも、応募するだけです。
切っ掛けは、家族に「どうせ小説書くなら金になるものを書いたら?」と言われて、公募情報のサイトを見てたらこれが一番賞金が高かったから決めました。
勿論、一次選考に残るとも思ってません。
受賞者の方々のプロフィールを見ると、皆様ずっと地道にオリジナル小説を書いてきたり、すごい専門知識をお持ちだったりする方ばかりなので、そんな方々と、腐れ二次小説しか書いたことがない私が対等な選考対象になるとも考えられません。
ちょっと書きたいネタがあったものですから、それを何らかの形に残しておきたかったので、生まれて初めて、「オリジナル創作」というジャンルにチャレンジすることにしたんです。

ただ、何分、オリジナルの長編ミステリーなんて書くの初めてのことですし、もしよろしければ、正式に送る前に、ここを見て下さってる何人かの方々に読んで頂いて、校正をお願いしたいのです。
お得意の誤字脱字、変な日本語、不適当な表現、ストーリーの矛盾点など、気づいた点をご指摘頂ける方を今から募集させて頂きたいので、よろしければ、メールでもコメントでもお気軽にお返事下さい。
念の為申し上げておきますが、銀英伝とは全く異なるジャンルの小説です。

舞台は、現代日本。
主人公は、警視庁に勤める20代半ばの女性新米刑事で、幼い頃、重度のアトピー性皮膚炎に掛り、母親が知人に勧められた健康食品で完治した(と本人は思っていた)という過去がある設定です。
物語の発端は、彼女が都内で立て続けに起きた殺人事件の捜査を担当することから始まります。
当初、全く別件と考えられていた2つの事件の被害者には、意外な共通点があることが分かり、急遽合同捜査本部が立ち上げられます。
そして、この1年間で日本全国で未解決となっていた殺人事件の内、実に8人の被害者に同じ共通点があることがわかり、一気に広域捜査へと発展します。
年齢も性別も職業もバラバラの被害者に唯一共通するものとは?
現代人が抱える闇、家族の崩壊と再生というちょっと重いテーマで自身が間近で見聞した事件をネタに書き上げる予定です。

よしりん作品ともラノベとも程遠いこんなもんを「書き上がったら読んでやろう」という奇特な方、いらっしゃいましたら、どうぞよろしくお願いします。

あ、まちろん、ハーレクインもどきも、もう一本の長編も並行して書きますよ。

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非公開 (08/18 23:07) 編集・削除

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メイ (08/19 08:06) 編集・削除

おお、すごい行動力だ。
こっちの、あの凄いボリュームのお話書きながら、さらにオリジナルも書いていたという事実に、ひたすら驚愕しました。

非公開 (08/19 08:53) 編集・削除

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Jeri (08/19 14:34) 編集・削除

うわぁ!
早速、校正してく下さる方が!
うううううれしいぃーーーーです。
書き上がりましたら、ぜひよろしくお願いします。
引き続き、校正者様募集してます。

オリジナルは、銀英というより、田中作品というより、そもそもラノベとは程遠いジャンルの話なので、本来なら銀英ファンサイト内で告知するべき代物でないと思うんですが…ここは、なぜか管理人の年季がモノを言ってるのか、同年代で、しかも逆に「ラノベなんて銀英くらいしかよんだことない」みたいな同じおばさん世代が多そうなんで、お願いしてみましたところ、やっぱりな反響でほくほくでございます。
デビュー前の新人作家には、担当編集者なんてついてませんから、公募作品って、とんでもない間違いや勘違いもそのままだと思うんですよ。
一次選考にも残るとは思えないとはいえ、自分としてベストなものを形に残したいので、ご協力ぜひよろしくお願い致します。

>ミヨレ様
ありがとうございます。
読んで下さってる方がまたお一人いらっしゃるのかと思うと感激です。こんなだら長いものを全部読んで下さって感謝にたえません。
自分でも、時々前の設定と矛盾がないか読み返すことがあるのですが、ここまで時間のかかるものになってしまっていたことに驚いてたりします。
既に、軽く文庫本一冊を超える量になってたんで、それならオリジナルでも書けるかもと思ったのが、応募を決意した理由の一つだったりしますw
これからも、ずっと読んでいて下さることを励みにしてラストまで書き続けますので、どうぞよろしくお願いします。

非公開 (08/19 22:42) 編集・削除

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Jeri (08/20 22:34) 編集・削除

>健闘を心からお祈り申し上げます。

ありがとうございます。
作品はバックアップをとっておきますが、一次審査に落ちた段階でWEB上にアップするつもりです。
その時に、よろしかったら読んでやって下さい。

まこりん (08/21 09:12) 編集・削除

おおっ、なんか凄いことになってる。
書きたいテーマがあるからこその英断とお察し致します。

Jeri (08/21 12:17) 編集・削除

>まこりんさん
人生に一度くらい、玉砕覚悟で無謀なものに挑戦してみたくなりました。
よろしければ、ご指導ご助言、よろしくお願い致します。

銀遺伝OVAの製作が一部北朝鮮で行われたらしい

ファイル 416-1.jpg

写真は、今や伝説と化しているオタク雑誌「月間OUT」のとある号の表紙です。
これに関連して、少々古いネタではありますが、↓なのもを見つけてしまいました。

http://news.livedoor.com/article/detail/3458826/

もしかして、世襲独裁国家である北朝鮮にとって、情緒不安定で危険な絶対権力者の主人公が、民主主義国家を叩き潰す物語は、将軍様も大絶賛だったのかも。

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まこりん (08/15 22:50) 編集・削除

ちょw
韓国どころか北にまで仕事が流れていましたか。
やはり、類は友を呼ぶとでも言いましょうか、北朝鮮とローエングラム朝銀河帝国は、経済が社会主義か自由主義かという違いはあるものの、世襲+独裁+先軍政治という点は共通しておりますので、その辺りに、そこはかとなく引き付けるものがあったりしてw
まあ、ルックス面はかな~り違いますけどねw

にしても、西側で作られた作品で、独裁側が民主主義側に勝ってしまうお話って、銀英伝の他に存在するんでしょうか。
少なくとも子供向き、大衆向きの作品の中には無いような気がするんですが、どなたか詳しい人いらっしゃらないですかね。

Jeri (08/15 23:54) 編集・削除

>まこりんさん
完全に同意なのですが、銀英伝を「独裁側が民主主義側に勝ってしまうお話」だと思っているのは、どうも私らを含めた一部ファンで、他の人の感想とか時々見つけると、「あの作品で民主主義の素晴らしさを知りました」とかいうのが多いんですよ。
よしりんも、その手の感想に「自分の言いいた事が伝わった」的なコメントをしてるのを読んだことがあります。
どこをどう読んだらそう思えるのか不思議なんですがねw
これが若者とおばさんの感性の違いなんでしょうか。
まあ、独裁者自身が、美形で質素ならなんでも許されてしまう「名君」というのが大前提ですがw
私個人的に言わせて頂ければ、ラインハルトみたいな感情的な人、君主どころか、会社の上司でもイヤです。
翌日から出社拒否になりそうw
そう考えると、真に偉大なのは、ヒルダたんであり、エミールくんであり、シュトライトやリュッケだと言えなくもないかも。

私も西側で作られた作品で、民主主義が超少数派になって、大多数の独裁支持国家に敗れるって、見たことがありません。

夏コミ中のようですね

ファイル 415-1.jpg

昨年行ってからもう1年経ってしまったのか…早いなぁ…
流石に今回は、双璧舞台の時のように、一時帰国するほどの気力はありませんが、コミケットが「震災で自粛」とかバカな行動に出なくで幸いでした。
今や日本のオタク文化は世界的規模にま蔓延しており、その中でも、このイベントに参加できることは、海外のオタク達にとっても憧れでる。
それを中止などしたら、日本は本当におしまいだと思っていただけに、嬉しいです。
円高とはいえ、物価がほぼ日本と同等に、先進諸国はビザなしで一定期間滞在できるし、時間さえとれれば問題ないんだけど、タイ人で日本旅行に行けるのは、まだまだほんの一部の富裕層。
一般の人は、まずビザを取得するだけでも大変でしょう。
ただ、徐々に中産階級が育ちつつある中、TDRやTDSとパックにした夏コミツアー、冬コミツアーを企画したら、意外と即日満員ということもありえるかも。
こちらでも、コスプレとメイドカフェは既に市民権を得ていますw

※写真はタイのコスプレヤー。オタク文化は最早バンコク(万国>笑)共通

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葵猫 (08/13 17:17) 編集・削除

御無沙汰してました。
このところ遠ざかっていたBL小説でしたが、昔愛読した小説のリメイク版が出たので読みふけったりしてました。
嫌いじゃないんですね、やはり。
コミケ、行きたかったんですが、体力的経済的(芝居のチケとりすぎと、行けば散財が見えてるので)理由で諦めました。
今日は城田優君の特番など見てました。
ロミオとジュリエットのけいこ風景が映りまして、はにかんだ笑顔が意外なほどピュアなかんじで、これならキルヒアイスも嵌ったかなと思いました。
テレビドラマも舞台も両方という珍しい売れっ子ですし、ギャラ的にも難しいと思うんですが、あの身長と体格、キルヒアイスやってくれたら素敵だったんですけどね。

Jeri (08/13 22:01) 編集・削除

>葵猫さん
お久しぶりでございます。
城田くん、役者として絶好調のようですね。
私も城田くんのキルヒアイス、すっごい見たかったです。
崎本くんが、あの身長差のハンディの割には、違和感が少なくて、結構ハマってたのを見ると、余計に、原作設定の身長に近くて、実力もある城田くんならと思わずに居られません。
でも、やっはり演劇界ではマイナーな銀英伝の舞台に、これから日本を代表する俳優になる素質のある若手の大物を連れてくる予算はなかったのかなと残念に思ってます。

ハーレクイン44の解説もどき

「言いたいことは作品の中で言う」ことが基本方針なんで、本来自分の書いたもんに対して解説するとか、語るとかいうのは好きではない。
何が言いたいのか、描きたいのかは、作品の中に織り込むものであって、それが読んで下さった方々に伝わらなければ自分の力量不足なんだろうし、伝われば文章が稚拙でも内容的には合格ということになる。というのが、一応私のポリシー。
でも、今回に限って言えば、補足させて頂きたいことが有りすぎるので、こうして別記事で書いてます。
この回で、私はヘレーネの台詞を借りて、以前から銀英伝に…というか作者のよしりんに対して問いたかったことを言わせています。

「人の命を、引き算や割り算で考える人を、私は軽蔑します」

これは、作中での弁護側証人である中将の言葉に対するヘレーネの反論として言わせてます。

「罪があり、報いがあり、最後に成果が残ったのです」

これは、言うまでもなく、「夏の終わりのバラ」で落ち込んでるラインハルトをヒルダが慰める時に言った台詞と全く同じ言葉です。
つまり、ヴェスターラント男の言葉に激しく落ち込んでしまったラインハルトに対してヒルダたんは、「たかが200万人という表現は絶対に使えない」と思いながらも、結局のところ数の論理を屈指して「改革によって救われた人々も確実に存在するのですから」と言って、いい子いい子して慰める。
つまりこういうことですね。

報い→ キルヒアイスを失ったこと(全然かんけーねーだろ!!)

免罪の計算式↓ 
改革によって救われた人の数ーヴェスターラントで死亡した200万人=圧倒的多数

「ヴェスターラントで死んだたかが200万人程度の平民の命なんて、あなたの偉業に比べれば小さいことなんですよ。だから、そんなに落ち込む必要はありません」(と言っているのと同じに聞こえます。私には)
ライヒルをベットインさせるシチュを作る為だけに、心優しいヒロインであるはずのヒルダたんにこんな最低の台詞を言わせてしまったよしりんセンセ。
この台詞を、25年を経た今、彼はいったいどう思ってるんでしょうか?
いや、そもそも男女の仲を進展させる為に、こんな台詞しか思いつかなかった作家ってどうなのよ?と今更ながら問い詰めたい。
まあ、だからこそ、よしりんは、自分でも恋愛を書くのは苦手だと言っているのでしょうが。
もしかして、よしりんは、ヒルダのこのセリフが、彼女自身やラインハルトも否定していた「数の論理」であることに気付いていなかった(少なくとも当時は)に思えてならない。
また、落ち込んでる主君に対してこんな台詞しか言えない「智謀と識見に富んだ女性」であるヒルダも、この台詞で慰められて立ち直ってしまう「名君」のラインハルトも、何とも情けない。
というわけで、この回は、原作のヒルダが体験できなかった出会い(エルやヘレーネ達)によって、自分が「人の命を引き算で考えていた」ことに気付いて落ち込むヒルダたんを書きました。
問題は、そうなるとライヒルのクライマックスであるあのシーンも微妙に違ってきてしまうんで、そこをどう書くか、今後の悩みの種なんですが。

エルフィーでハーレクインもどき書いてみる(44)

はじめに

この長文記事は、「銀英伝をハーレクインロマンス化する」というコンセプトで書かれたブログ不定期連載小説です。原作準拠の世界観から、「リップシュタット戦役の最中に、高齢のリヒテンラーデ公がキルヒアイスよりに先に亡くなってしまった」というIFで始まり、そこから原作世界とは違う方向に話が進みます。主人公は、前述の事情で一部粛清や流刑を免れたリヒテンラーデ一族の一人、エルフリーデです。彼女が流刑になっている親族を救う為、ロイエンタールと政略結婚し、ハーレクインロマンスもどきのツンデレ恋愛劇を繰り広げるベタベタで甘々な夢小説です。所謂「ノーマルカップリング話」、「ロイエル小説」ってやつです。キルヒアイスを除く帝国&同盟の主要キャラの殆どが死なずに皆で幸せになる予定。作中唯一のハーレクイン男、ロイエンタール元帥のお子ちゃまぶりを愛でつつ適度にイジメてます。原作者のご意向に沿って、BL、801などはありません。1~2週間に一度ペースの更新頻度を目指し、今のところ60回程で終了予定です。
長くなってしまった為、ブログを辿るのが面倒だろうということで、読みやすいように、倉庫に収納しました。検索などではじめてここに辿り着き、「最初から読んでやろう」という奇特な方は、↑の「Log&Presents」をクリックしてこちらからどうぞ。ブログに掲載したものは、3、4回分ごとに、不定期に倉庫へ転載していく予定です。

 11月3日の夜、ボーデン邸に暮らすヒルダ達の元へ、隣家のロイエンタール邸から、事件の解決を祝う飲み頃のロゼワインが20本程届けられた。
 ロゼとしてはこの時点で最高級のものだと言われていたが、大量貯蔵していた理由は、懐妊中の伯爵夫人の胎児の性別が判明した時の祝いに、男児の場合は、辛口の白を、女児の場合は甘口のロゼを用意していたのだと、届けに来た執事がこっそり教えてくれた。
「余りものを差し上げるようで恐縮ですが…」
 と、律儀言う執事に向かって、ヒルダ達は、突然の高価なプレゼントを全員満面の笑で歓迎した。
 その伯爵夫人とは、翌日の午後、再び裁判所で落ち合うこととなっている。今回は、業務の都合上、対策室からは、ヒルダとヘレーネのみが正午に抜け、裁判が終わり次第また戻ることになっている。
 今度の被告は、先日とは違い、サビーネを直接襲ったことを認めている男の一人だった。
 既に第一回の公判は終えており、罪状認否に於いて、館の襲撃(器物損壊)と集団的暴行(サービネの他に同僚達と共に館の侍女2名を襲い執事1名の殺害に関与したことを自供)、未成年者姦淫致傷の起訴事実を全て認めていた。
 弁護側は、特殊な状況下での判断能力の不足と上司からの心理的圧力による心神耗弱状態にあったことを理由に減刑を主張している。
 それに対して検察側は、「善悪の判断が不可能な程の精神状態にあったとは言えない」として、死刑を求刑していた。
 判決は、前例から、この間をとって禁固何年かになる可能性が高いと予想されたが、ヘレーネは勿論の事、ヒルダもエルフリーデも納得していなかった。
 サビーネをあんな無残な姿で死なせた男が、なぜ即座に極刑にならないのか? 最初に裁判の経緯を聞かされた時は、対策室の全員が怒りに震えた。
 今日の第2回公判は、弁護側、検察側それぞれの証人が証言台に立ち、関係者の立場から被告を弁護又は糾弾し、裁判官と陪審員にそれぞれの思いを訴える。
 そこで、双方の言い分を聴いた陪審員と裁判官が、次回公判までに非公開での話し合いの機会を最低2回以上持ち、判決が確定する予定になっていた。
 エルフリーデは、懐妊中の体調と胎教を考えて、当初周囲にこの裁判の傍聴を止められていた。しかし、今後更に外出が困難になると思われる彼女は、友人を死に追いやった男の顔を一度は直接見ておかなければ一生後悔する気がしていた。
 また、この蛮行に対して、新政府の司法制度が、どのような裁定を下すのか、どうしても知りたかった。
「私は絶対に行くわ。お前たちの言う『公正な裁判』というのを見届けてやるのよ」
 前夜、使用人達から引き留めるよう懇願されて、彼女の意思確認をする夫に向かって、エルフリーデはそう言い放った。
 その強い眼差しに、帝国元帥である夫は、「そうか」とだけ言って、妻を思い留まらせる役目を放棄した。。
 結局、エルフリーデは、途中で何かあってもすぐに対処できるよう、別室にシュヴァイツァー夫人と主治医を控えさせる条件で、ヒルダと共に裁判の特別関係者傍聴席に座った。
 開廷の手順や席次は以前の時とほぼ同じで、全員が起立し、裁判長が開廷を宣言することから始まった。
 関係者全員に配られた資料によると、この裁判の被告人は、元帝国軍上等兵で、宇宙艦隊司令部の中にあって、医療班の衛生兵として勤務していた29歳の男である。逮捕、起訴と同時に軍籍を剥奪され、今は一介の市民として裁判を受けている。
 男は、入廷すると同時に、ヘレーネやカルツ夫人の座る原告側遺族席へ向かって深々と頭を下げた。
 前回の裁判と同様、犯した罪の凶悪性からは想像できない程、平凡で無害な若者に見えた。
 一つ違っていたのは、前の裁判の被告人の態度が、どこか演技くさかったのに比べ、今日の男は、傍目にも本当に憔悴しきっており、心から罪を悔いているように見えることだった。
 ずっと罪悪感に悩まされていたらしく、捜査の手が伸びた時も、往生際の悪い者が多い容疑者達の中にあって、DNAの一致という決定的な証拠を突きつけられる前に進んで詳細な自白をし、自首扱いになっている。
 全員着席し、裁判が始まると、最初に証言台に立ったのは、意外にも帝国軍中将の軍服を着た恰幅のいい中年男だった。
 彼は、自信満々の態度で自らの姓名と階級、現在の職務と被告人との関わりを述べると、ゆっくりと、陪審員の方へ体を向けた。
 この将官は、宇宙艦隊司令部の後方で、病院船や修理艦約2000隻を指揮統括する司令官であり、階級からして被告人の直属の上官ではないし面識もないという。しかし、被告人の同僚及び直属の上官達からの強い嘆願により、帝国軍の医療班を代表するつもりで、皇帝陛下やミッターマイヤー元帥の御不興を買うことも覚悟の上、この証言台に立つことを申し出たというのである。
 ヘレーネは、同じ帝国軍人として、身震いするようなおぞましさを感じたが、隣のカルツ夫人としっかり手を握り合いながら、必死で自分を抑えていた。
 エルフリーデとヒルダも、それぞれの膝の上で拳を握り締め、目の前の将官への嫌悪の気持ちをじっと堪えた。
「彼は、確かに罪を犯しました」
 証言台の中将が、よく響く声で、36名の陪審員に向かって話し出した。
「しかし、彼は既にその報いを受けております」
 ヒルダが、はっと顔を上げる。
 なんだろう? この既視感は?
 証言台の男の言葉は、被告の生い立ちを語り始める。
 被告人の男は、リッテンハイム侯の領地惑星で、平民家庭の次男として生まれる。父親は、侯爵家の従僕で、母は結婚前まで同じ邸の下女だった。
 父は、当時の多くの門閥貴族の下働き同様、少ない賃金で牛馬のように働かされており、家は貧しかった。
 兄が徴兵され戦死すると、間もなく父も身体を壊して働けなくなり、被告の男は、義務教育を終えるとすぐに、父同様リッテンハイム邸の従僕となる。
 成人に達すると、病身の父と母を養う為、徴兵を免除される代わりに侯爵家の私兵となり、以前より更に激務だが、若干高い給与で一家を養うことができるようになった。
 初等教育しか受けていない男は、帝国語の読み書きと生活に必要な最低限の簡単な計算くらいしか学問をしたことがなく、何事も上の人間の命じることに従う以外生きる術はないと思い込んで育った。
 事件の後、正規軍に編入された男は、適性試験を受けて、思いがけず初期医療の専門コースの受講を奨められる。そこで男は約半年の間、一般教養と初歩的な医学知識を学び、初めて高等教育に触れる機会得る。
 更に半年の実地研修の後、周囲も驚くスピードで知識と技能を吸収していった男は、看護助手の衛生兵として、ラグナロック作戦、バーミリオン会戦に従軍、献身的に職務に従事し、数多くの負傷兵の命を救った。その数は、彼が上司の命令に任せて行なった犯罪の被害者の数百倍になるだろうと言う。
 また、この間にオーディンで上官の紹介で知り合った女性と結婚し、一児をもうけている。
 因みに、この男は、36型に感染していたが、未だ発症はしておらず、現在のところ薬で発症を抑えられている。このペースで行けば、重篤化する前に特効薬の完成が間に合う可能性が高かった。また、幸いにも彼の妻子には感染は見られなかった。
 彼は、このままあと1年現場で経験を積み、資格試験に受かれば准看護師として軍曹に昇進可能で、更に2年以上の現場経験があれば、正看護師として准尉にという道も開けていたはずだった。
 ゴールデンバウム王朝が続いていれば、一生を辺境惑星で埋もれていたかもしれない男は、生まれて初めて自分の人生に光を見出した矢先に、思わぬ旧悪が暴かれたのだ。
 そこで、彼の人生は再び暗転する。
 公正で有能な新王朝の行政官が治める平和な故郷で、漸く安定した暮らしを始めていた両親は、息子の犯行が公になると、周囲の好奇と非難の目に耐え切れず、そろって首吊り自殺を遂げた。
 被告の男は、その知らせを受けると泣き崩れ、改めて自分の犯した罪の重さを思い知ったのだと言う。
 また、妻と生まれたばかりの娘を犯罪者の家族にしない為に離婚した。
 弁護側証人の中将の言う「既に報いを受けている」とは、これらことを指しているのだろう。
 エルフリーデは、彼の言いたい理屈は理解できないでもなかったが、それでも何かが違うと思った。ただ、それを第三者に説得力のある言葉で説明できないのがもどかしかった。
「陪審員及び裁判官の皆様に申し上げたい。彼が罪を犯してしまったのは、彼一人の人格によるものではなく、今申し上げた当時の社会事情に拠るところが大きいと、私は考えます。彼も、彼の家族もまた、ゴールデンバウム王朝の下で、門閥貴族によって不当に搾取され、虐げられてきた被害者なのです。もし、あのまま旧体制が続いていれば、彼は一生、医療従事者という自分の適性を知ることもなく、それによって救われた命もなかったかもしれません。どうか、このことを、ご熟考願いたい」
 陪審員達の空気が、それまでと微妙に変わる気配がした。
 中将は、更に言葉を続ける。自分の論理に、完全な自信を持っている口調だ。
「彼は、罪を犯しました。だが、同時に、彼が軍の衛生兵として、どれ程の命を救ったか、その成果も、我々は彼を裁くに当たって考慮すべきではないか。罪があり、報いがあり、最後に成果が残ったのです。どうか皆さん、この誠実で有能な青年の未来をたった一度の過ちで閉ざすような判決は避けて頂きたいと、切にお願い致します」
 最後に陪審員席に向かって深く一礼する将官を横目に、ヒルダは、雷に打たれたように固まってしまっていた。
『罪があり、報いがあり、最後に成果が残ったのです』
 なんだろう、これは? これは、私の言葉? まだ人の痛みを知らない世界の、もう一人の私自身の言葉か?
 隣のエルフリーデが訝しげに視線を傾けるのも気づかず、ヒルダは己の裡に拡がる深い闇と対峙していた。
 その後、同じく被告人を弁護する立場の証人の意見陳述が続き、それが終わるといよいよ検察側証人として、ヘレーネが証言台に立つ番になった。
 裁判は公開制だが、関係者個人が特定できないよう配慮され、陪審員と証人には映像処理が施され、音声も変えてある。また、一般の傍聴人からは、姿が見えないよう特殊シールドの衝立で仕切っている。
 これにより、ヘレーネが、リッテンハイム侯の娘であることが公にならずに済み、同時に被告人の親族を、世間の誹謗中傷から守る役割も果たせる。
 地球学に基づいた、先進的裁判制度を試験的に導入したものであった。
 ヘレーネは、音も無くすっと席を立つと、静かに証言台に向かった。
 少し前まで弁護側証人を見詰めていた険しい目線は伏せられ、静かな怒りを身体の裡へ押しやっているようだった。
「私が、裁判官と陪審員の皆様に申し上げたいことは一つだけです」
 最も怒りの大きいはずのヘレーネは、驚くほど冷静で、穏やかにさえ聴こえる口調で言うと、陪審員席に向かって一礼した。
「人間の命を…」
 ヘレーネは、意外な言葉で切り出した。
「人の命を、引き算や割り算で考える人を、私は軽蔑します」
 陪審員達の中からどよめきが走り、先程の中将が苦虫を噛み潰したような表情になった。
 だが、一番衝撃を受けていたのは、なぜか関係者用傍聴席に座るヒルダであることに気付いている者はいない。
 ヒルダは、蒼碧色の瞳を最大限に見開くと、全てを理解して小刻みに身を震わせた。
「サビーネは、私のたった一人の妹でした。最後の肉親でした。その妹を殺した人間が、どんなにたくさんの人を救ったとしても、私にはそんなことは関係ありません」
 ヘレーネの口調は、だんだんと強いものになっていく。
「他の遺族の方だって同じはずです。殺された側にとって、殺した人がその後でどんな善行をしたかなんて、関係ないんです。救った人間の数から殺した人間の数を引いた結果がプラスなら、無罪なんですか? 減刑されるんですか? そんな算数の授業みたいな裁判なら、私はこの新たな裁判制度に失望します」
 ヘレーネは、そこまで言うと、激昂ぎみになっている自分に気づき、小さく「失礼しました」と詫びて再び向き直った。
「被告人の立場と、正規軍に入って後の献身は理解致します。ですが、それと、彼が妹や他の被害者の方に対して行なったことは、全く別のものです。罪は罪として、裁いて頂くことが、私の願いです。陪審員の方々は、法律の専門家ではなく、私達と同じ一般市民の中から選出されたと聞いております。ならば、皆様にもそれぞれに大切な人がおありと思います。どうか、もし、私の妹の身に起こった事が、ご自分の娘や恋人にも起こったらと、一度でいいですから考えて下さい。…皆様の想像力と良識に期待しております」
 最後の一言を涙声で漸く言い終えると、ヘレーネは堪らずに顔を背けて自分の席に戻った。
 陪審員席が、水を打ったような静けさに包まれる。
 その後も、被告人について「充分に更生の余地がある。いや、彼は既に更生している」と主張する弁護側と、「罪はあくまでも罪として罰しなければ帝国の秩序は保てない」と主張する検察との間で激しい議論の応酬が続いたが、意見が出尽くしたかに見えた時、一人の陪審員が、裁判長に対して、被告人への質問の許可を求めた。
 質問者の陪審員は、サビーネと同じ年頃の娘を持つというフェザーン在住の帝国人主婦だった。彼女は、裁判長の許可が下りると、被告の青年としっかり目を合せてから尋ねた。
「今、ここで、貴方の量刑について、弁護側と検察側で様々な意見が出ていましたが、私は、肝心の貴方本人がどう思っているのかを知りたいです。どうですか? 貴方ご自身も、弁護団の言う通り、生きて償っていきたいとお考えですか? それとも、ご自分の罪は、ご自分の命で償うべきとお考えですか?」
 女性の真剣な問いに、被告の男は、逡巡の色を見せた。自身の気持ちと弁護団との打ち合わせ内容との間で葛藤しているようだった。
「被告人、答えて下さい」
 数分の沈黙の後、裁判長が促した。
「…わ…私は…私は…」
 男は、俯きながら、やっとのことで口を開いた。
「…生きたいです。生きて、償いたいです…」
 消え入りそうに言う被告人に、質問者の女性陪審員は、裁判長に向かって無言で頷いた。
 そのやり取りが、終わるか終わらないかのうちに、即座にもう一人の陪審員が手を挙げて、再び裁判長に被告人への質問許可を求めた。今度の質問者は、被告人と同年代のフェザーン人の会社員だった。
 法廷は、一人の陪審員が被告人に対して立て続けに質問をすることを禁じているので、しばしばこういうことが起こる。
 被告人が陪審員との問答を続けるうちに、つい自分に不利なことを口走ってしまうことのないよう、被告人の利益を考慮してのルールだった。
「貴方は今、生きたいとおっしゃったが、あなたに殺された人達だって、そう思って、でも貴方も貴方のお仲間もそれを許さず殺してしまったんですよね。貴方は、それを分かった上で、尚、自分は生きたいと言っているのですか? 自分がいかに身勝手なことを言っているか、自覚してますか?」
 若い男性の言葉には、明らかに被告人に対する憤りが込められていた。
「陪審員、質問は一回につき一問でお願いします」
 裁判長が形式上嗜めると、陪審員の青年は、即座に詫びて言い直した。
「では、質問を絞ります。貴方は、貴方に殺された人達のことを考えても、まだ生きたいのですか?」
 陪審員の青年の追求は更に熾烈になった。
 ヘレーネは、そのやり取りを静かに目を閉じて聴いていた。自分の思いが、裁く側の人々に伝わっていることが感じられた。だが、同時に、本来は善良であったであろう被告の青年の、迸るような生への執着もまた同時に感じていた。
「…はい。生きたいです。生きて、もっと、医療のことを勉強したいです。もっと沢山の人達を救いたいです。…妻に、もう一度会いたいです。娘の成長した姿を見たいです…!」
 これが、偽りのない被告の男の本心なのだろう。
 今度は、はっきりと聴こえる声で答えてから、被告の青年は深く項垂れたまま起き上がれないでいた。
 人間とは、かくも業の深い生き物であるのか。
 エルフリーデは、この時初めて憎むべき男に、哀れみを感じた。
 この日の公判は、この質問を最後に閉廷となり、エルフリーデは、控え室に戻ってからシュヴァイツァー夫人と共に帰宅し、ヒルダとヘレーネは、大本営へと戻って行った。
 ヘレーネは、裁判よりもヒルダがひどく落ち込んでしまっていることが気になっていた。
 裁判所を後にして、ランドカーが走り出してからも、ヒルダはずっと無言で俯いたままである。
 これではまるで、どちらが裁判の被害者遺族なのか判らないような消沈ぶりである。
「あの…どこか、お悪いのですか?」
 沈黙に耐え切れなくなったヘレーネが、具合でも悪いのかと心配して尋ねる。
 しかし、ヒルダは尚も無言でゆっくり首を振るばかりである。
「ヘレーネ…私、あなたに軽蔑されない人間になりたいわ…」
 ぽつりとそれだけ言ってまた口を閉ざしてしまったヒルダに対して、ヘレーネは本気で彼女がどうにかなってしまったのではないかと心配した。
「何を仰ってるんですか? 軽蔑だなんて…私は、初めてお会いした時からずっと、フロイライン・マリーンドルフ…いえ、ヒルダを尊敬しています。上司としても、友人としてもです。今も、これからも、ずっとこの気持ちは変わりません」
 だが、ヘレーネの言葉に、ヒルダは今まで見たことのないような悲しげな瞳で見詰め返してくる。
「私…あなたが思っているような立派な人間じゃないわ…」
 言ったきり、ヒルダは再び目を伏せ、貝のように口を閉ざしてしまった。
 ヘレーネがその様子に途方に暮れてしまっていると、ランドカーは大本営に到着した。


 邸に戻ったエルフリーデも、今日傍聴した裁判に対して複雑な思いを抱いていた。
 シュヴァイツァー夫人も、他の使用人たちも、急に口数の少なくなった身重の女主人を心配して、あれこれと世話を焼いたが、メディカルチェック器では異常はないようなので、一安心した。
 胎児の性別が男児であることが判って以来、邸には毎日様々な方面からの祝いの品が届けられて1階の広い一室を占領していた。
 特にフェザーンのベビー用品メーカーや服飾メーカーからのアプローチは大変なもので、既に生まれてくる子供は、5歳くらいになるまでの身の回りの品に不自由しないまでに貯まっている。
 オーディンのロイエンタール邸からは、残っている使用人達が気を利かせて、先代夫人のレオノラが、ロイエンタールを出産する際に誂えたマタニティドレスや、特注した豪華なベビーベット等を高速貨物便送ってきた。
 こちらへ移転する際も、妊娠がほぼ確定していた為、何点か荷物に入れてきたものがあったが、今回のはそれを数倍上回る量だった。
 マタニティドレスは、門閥貴族や皇族の御用達のブティックが、全て1点もので製作したもので、自動化と大量生産化の発達したフェザーンでは逆に手に入り難いものだった。20歳で息子を出産したというだけに、若い妊婦に相応しいデザインが施されている。
 ただ、エルフリーデとは、妊娠時期の季節がずれているため、残念ながらそのままではサイズが合わないと思われた。シュヴァイツァー夫人は、早速、縫製業者を呼び、これからの季節に着られるものを選定して、その時期が来たらすぐにサイズ直しができるように手配した。
 ロイエンタール自身が着たというベビードレスも、新品同様の状態で保たれており、皇子にも劣らない程立派なものだった。
 エルフリーデは、帝国の由緒ある家の慣習に則って、父親から受け継がれたこのベビードレスを、生まれてくる息子の初お目見えの場で着せることを決めた。
 彼女自身のものや、父や母の家から代々受け継がれてきたものは、2年前の爆破事件で跡形もなく吹き飛んでしまってない。
 だが、ロイエンタール家から送られてきたこれらの品々は、そんな寂しさを吹き飛ばすほどの質と量だった。
 他にも、誂えの高級ブランドのベビー服や肌着、おもちゃ、オーダーの靴など、庶民の感覚で見ると、赤ん坊には勿体ないような贅沢品ばかりが揃っていた。
 どの品も、先代主人の財力と、妻への愛情、生まれてくる子供への期待が込められているのを感じる。
 ロイエンタールは、両親のことを良く言わないばかりか、最悪の親子関係だったと言っていたが、この品々を見る限り、エルフリーデにはそうは思えなかった。
 エルフリーデは、その後、遅くなるというロイエンタールと叔父のゴットルプ子爵からの連絡を受け、子爵夫人と子供達とフレデリーケの5人で夕食を摂った。
「エルフィー、裁判の傍聴は、今日で最後になさるの?」
 フレデリーケがさり気無く尋ねる。彼女もシュヴァイツァー夫人同様、身重のエルフリーデがあのような場に出ることに賛成していないようだ。
「ええ。この前と、今日の公判を見て、新体制の裁判制度がだいたいどんなものかわかりましたので、これで最後にするつもりです。判決審の結果はすぐに教えてくれるそうですし、特別に撮影した映像を見せてもらえることになってます。私も、試験勉強と出産の準備でこれから忙しくなりますから、これからは、公務と病院の検診以外の外出は控えるつもりです」
 エルフリーデが、彼女なりの決意を述べると、同じく心配していた義理の叔母のゴットルプ子爵夫人も、顔を綻ばせた。
「そうですわ。何といっても、伯爵夫人はお若いし、初めてのご出産ですもの。大事をとってもとり過ぎるということはありませんわ」
 2人の子爵夫人が顔を見合わせて安堵する姿を見て、エルフリーデもほっとした。
 本当のところ、妊娠も受験も言い訳に過ぎない。当初は、できる限り傍聴し、サビーネを死に追いやった者達の顔を一人残らず見てやるつもりでいた。だが、前回も今回も、罪を糾弾され、晒される被告人を見ても一向に心が晴れなかった。それどころか、どんどん気持ちが沈んでいく。こんな思いをすると精神的にも肉体的にも消耗が激しくて、本当に胎教に悪いように思えてしまう。
 ただ、まだ判決を聞くまでは判断するのは早急と思いながらも、裁判のやり方そのものは、理に叶った公正なものだと思った。
 エフルリーデは、最近になって、大学で学ぶ専門分野を、地球学の中での、「地球時代後期先進文化地域の司法制度」に的を絞っていた。
 その為にも、今回の裁判の傍聴は興味深いものだった。
 大学への入学資格試験には、今年中に受かる自信があったが、志望校であるフェザーン帝国大学の合格は、一度の挑戦では難しいと思われた。目標は、20歳までに合格することだったが、全星域から秀才が集まる中、5回、6回チャレンジしても受からない者も珍しくないと聞く。
 夕食後、エルフリーデは1時間程フェザーン語で書かれた地球学の専門書を読むと、明日は午後から公務が控えていることもあり、早めに就寝するつもりでバスルームに入った。
 明日、先日の爆破テロ事件の解決を祝い、また、犠牲者を追悼する為の式典が、ドームシティに於いて皇帝の名で執り行われることになっていた。同時に、同盟政府に対して、レンネンカンプの死の責任を問う為の帝国側の決定事項が発表されることになっていた。
 エルフリーデが、予てから計画していたことを実行するに相応しい舞台が漸く訪れたのである。
「決行は、不自然にならないよう、時期に相応しい舞台が用意されるのを待つのが賢明」と言うヒルダの助言に従って、この日をずっと待っていたのだ。
 その言葉通り、ヒルダ達は事件解決に多大な貢献をし、思いの外早くその舞台は用意された。
 ヒルダ達対策室のメンバーは、36型の感染が当初の予想以上に抑えられていることと、爆破テロ事件解決の功績を認められ、全員一階級昇進し、勲章を授与される予定である。また、リンザー准将も、事件当日の迅速な指揮により、被害を最小限に抑えた功により少将への昇進が決まっていた。
 犠牲者を悼む為、出席者は全員喪章を付け、派手な演出も抑えられる予定だったが、仲良くなった人達の昇進は、エルフリーデにとっても嬉しかった。
 ミストシャワーで身体を洗い、バスタブに向かおうとした時、ふと、鏡に映る自分の身体に目を留めた。
 最終的には、お腹に5、6kgもの重さを抱えることになると言われていたが、今の時点では全くその気配はない。
 ただ、躰の線が少し緩やかで丸みを帯びてきて、胸の膨らみも増した気がする。
 無垢な少女だったのは、僅か半年前のことだ。それが随分と昔のことのような気がする。
 大人の女の身体になりつつある自身の体を、エルフリーデは様々な感慨を持って暫く眺めていた。
 ジャグジーとアロマオイルの香りの心地よいバスタブに浸かっていると、暫くしてバスルームのドアが開く音がして、ロイエンタールがシャワーブースに入る気配がした。
 間もなく、当然のように、夫は同じバスタブに入って来て、白い円形の湯の中で向かい合った。
 エルフリーデは、もう慣れたので何も言わなかったし、今更誰にも訊けることではないが、いつもこれは夫婦として普通のことなのかと疑問に思っている。
 少なくとも、自分の両親は、絶対にそんなことはしていなかった。
 それとも、この男の両親はそういう人達だったのだろうか? でも、それだと、夫婦関係が破綻していたように言われていることと矛盾している。
「なんだ?」
 ロイエンタールは、何か言いたそうな幼妻に、いつもの彼の言い方で尋ねた。
「なんでもないわ」
 頬を赤らめて、ぷいと横を向いてしまったエルフリーデに、ロイエンタールは黙って自分の身体をずらして彼女の横に座り直すと、幼妻の軽い身体を膝に乗せた。
「どうだ? 新裁判制度とやらは、伯爵夫人のお眼鏡に叶ったかな?」
 この体勢に似つかわしくない会話に、エルフリーデは少し顔を歪めたが、今日傍聴してきた感想を素直に話した。
「ほう。それは結構なことだな。民心への配慮や被告、原告双方の利益は民主共和制の美点を採り、迅速さでは独裁政権の果断さを採用したというわけか」
 ロイエンタールは、珍しく軍事以外のことに興味を示し、新裁判制度を的確な言葉で表現してみせた。
 だが、そう言いながらも、彼の左手は、右腕で抱く幼妻の瑞々しい胸や尻を撫で廻して楽しんでいる。エルフリーデは、既に諦めの境地でされるがままになってやっていた。
「俺は近々出征することになる」
 ふいに、ロイエンタールの手が止まった。
「え?」
 と言って至近距離で合わせた双色の瞳は、エロスの光を湛えて妖しげに輝いている。
 エルフリーデは、催眠術にかかったようにじっと動けなくなってしまった。
 だが、すぐに先程の言葉を頭の中で反芻すると、今度は急に不安になってきた。
「心配するな。同盟軍とは今や圧倒的な戦力差がある。俺は統帥本部総長として、総旗艦ブリュンヒルトで皇帝陛下を補佐する。万が一にも俺が戦死するような事態にはならんさ。第一、戦闘に入るかどうかもまだわからん。相手が恥も外聞も捨てて無条件で帝国軍の侵攻を受け入れる可能性もゼロではないしな」
 ロイエンタールは、彼にしては珍しくそんな気休めを言った。
 そんな事態になるなら、ヤン一党はレンネンカンプを拉致したりはしなかっただろうし、行方を晦ましたりもすまい。
 恐らく、同盟軍内でも、ヤン・ウェンリー一党に賛同する勢力が、最後の抵抗を試みるだろう。
 皇帝は、既に上級大将以上の軍最高首脳に対しては、1日の御前会議で出兵の意思を宣言しているが、明日の式典では、正式にそのことを帝国全土に布告する予定だった。
「そう…」
 だが、エルフリーデはそう言うと同時に、くてっと身体から力が抜け、ロイエンタールの肩口に顎を乗せた格好のまま動かなくなってしまった。
「おい?」
 この時になってやっと彼女が湯中りしたことに気づいたロイエンタールは、バスタブからエルフリーデを掬い上げると、バスタオルに包んで寝台に横たえた。
 どうやら、話し込んでいるうちに、1時間近くも湯に浸かってしまったらしい。
 ロイエンタールは、すぐにインターフォンで使用人に、水と冷却シートを持って来るよう命じた。その間、自身は慌ててバスローブを羽織り、熱を帯びたエルフリーデの額の汗をタオルで拭ってやっていた。
 1分と待たずに、執事とシュヴァイツァー夫人が現れると、ロイエンタールは全裸のエルフリーデの体をバスタオルと毛布で隠しながら水を飲ませ額に冷却シートを貼り付けた。
 シュヴァイツァー夫人が、奥様が脱水症状を起こしていることに気づき、侍女に命じて吸収の良いアイソトニック飲料を持って来させて飲ませると、エルフリーデは薄っすらと目を開け、急激に上がった体温も徐々に正常に戻ってきた。
 ほっとした一同は、念の為主治医の往診を乞い、懐妊中の子に異変がないか診断を仰いだ。幸い5分後に駆けつけた産婦人科の女医が、胎児に別状はないことを伝えると、騒ぎは漸く落着したかに思えた。
 しかし、そう思ったのは、邸の主人だけで、執事も主治医も侍女頭も隣室の専用リビングで、帝国元帥たる主人に向かって、全員顔を顰めている。
「旦那様、お気持ちはわかりますが、今は大事な時でございます。どうかご自重を」
 と言う執事の言葉を、一瞬ロイエンタールは理解できなかった。
「元帥閣下には、誠にご無礼ながら、奥様とお子様の為に、医師として敢えて申し上げます。どうか、安定期に入るまでは、夫婦生活には尚一層のご配慮をお願い致します」
 それを聞いて、ロイエンタールは自身が多大な誤解を受けていることに漸く気づいた。
「本当に…仲がお宜しいのは、私どもも大変喜ばしいことではございますが…何事もなかったからよいようなものの、寿命が縮む思いでございましたわ」
 シュヴァイツァー夫人も頭を抱えて見せる。
 ちがう。誤解するな。俺達はただ今日の裁判の様子と明日の式典の話をしていただけだ。つい長話になって気づいたら湯中りしてしまったのだ。俺はそこまで好色ではない。
 と、反論したい気持ちをロイエンタールはぐっと堪えた。
 今更彼がそんなことを言っても、信じてもらえないのが自分でも解っているからだった。
 結局ロイエンタールは、3人の年配者の前で、「わかった。以後気をつけよう」とだけ殊勝に言うことで、この件を終わらせたのだった。


 翌11月5日は、朝から式典の準備で大忙しだった。
 この日の午後からの式典には、エルフリーデだけでなく、義理の叔母であるゴットルプ子爵夫人も、フレデリーケも夫と同伴で列席することになっていた。
 ゴットルプ子爵とロイエンタールは、昼過ぎに一旦こちらに戻って礼服に着替えてから夫婦揃って出掛ける予定だったが、フレデリーケは、ここで支度をして、別居中の夫とは現地で落ち合うのだという。
 今日はいよいよ計画を実行する日である。
 エルフリーデは、早朝から協力各者に端末で連絡をとり、下準備に余念がなかった。
 しかし、この計画の最初の重要点は、式典にフレデリーケを欠席させなければならないことだった。
『フレデリーケ様、ごめんなさいっ!』
 エルフリーデは、心の中でそう詫びながら、朝食のフレデリーケのコーヒーに即効性の下剤の粉末を入れた。

コメント一覧

ゆうやん (08/07 23:40) 編集・削除

タイミングよく来合わせてラッキーしました。
裁判ですね・・・確かにこれは甘甘とは程遠い。しかし、やっぱり私は

>今更彼がそんなことを言っても、信じてもらえないのが自分でも解っているからだった。
本日一番これにウケてしまいました。きっと読者みんな反応すると思うんですよ。真人間になったのに今までの素行が悪すぎて信用度が悪いなんて絵に描いたような自業自得wwww

次回エルフィの悪巧みwいよいよ発動ですね。計画通りにうまくいってフレデリーケさんが無事めでたく離婚できますように!!

りっく (08/08 00:28) 編集・削除

裁判重たいですね。
ヒルダの苦悩もわかります。


しかし最後の最後で下剤って・・(爆)

べる (08/08 03:45) 編集・削除

スピンオフから続く真摯な内容をじっくり堪能し、
ヒルダたんの心の動きに唸ったあと、
エロオヤジなロイにワクワクし…、
最後は下剤……wwww。
夜に起き出して、一気読みしましたわw

>帝国元帥たる主人に向かって、全員顔を顰めている。
:いいぞ!もっとやれ、使用人!!

Jeri (08/08 11:41) 編集・削除

>ゆうやんさん
ロイが信用を得るには、あと20年くらい身を謹んで生活しないと無理かもw

>りっくさん
はい。重い話を書いてしまいました。
でも、どこかでどうしても入れたかったことです。
最後の下剤ですが、別に「丸一日仮死状態になる薬」でもよかったんですが、それだと事が大袈裟になるので、下剤で落ち着きました。

>べるさん
真人間になったのと比例するように、ロイのエロオヤジ化には拍車がかかるようになってますw
これから出征まで時間ないので、更にエスカレートする予定です。

りっく (08/08 22:08) 編集・削除

うーん、睡眠導入剤なんてどうざんしょ、と思いましたが、それだと気合いがあれば(式典に出なきゃとかのプレッシャー)、結構起きてはいられるらしいので、頭ぼーっとするだけで、下手すると式典で居眠りして逆に恥かく可能性がありますね。難しい。

入手のしやすさは、下剤が上ですし。

しかし本当「許して」ものですな。

Jeri (08/09 10:56) 編集・削除

>りっくさん
そうです。睡眠導入剤は、気を張って我慢して起きていることもできなくはないし、一番副作用がなさそうで、入手も楽なのが、やっぱ下剤かなとw
私の経験上、飲みすぎても殆どの場合、1日経てば治りますし。一方睡眠薬の場合、効果を期待して強いものを飲むと、数日間朦朧としちゃうとかもあります。