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リセット-寂寞の皇后-(7)

ロイエンタール艦隊が、ミュラー率いる同盟軍との連合艦隊と合流を果たした日から遡ること10日前、新帝国歴19年9月5日、摂取皇太后ヒルデガルドは、皇帝アレクサンデル・ジークフリードの名に於いて、ミッターマイヤー大元帥に対し、逆賊マクシミリアン・ジークフリード皇子討伐の勅命を下した。
但し、リセット前のラインハルトと同じように、ミッターマイヤーには特別にこの勅命を拒否する権利を与え、返事の期限を翌日とする配慮をして、大元帥に一応の敬意を払った。
11歳の皇子が艦隊戦の指揮をとれるわけはないので、実際に討伐の対象となるのはロイエンタールやミュラーであることは明らかだった。
また、賊軍の事実上の最高指揮官であるロイエンタールからは大元帥の称号を剥奪し、同じく叛逆に加担しているミュラーに対しても元帥号の剥奪を通告した。
彼等だけでなく、従軍する全ての帝国軍人は、その階級を剥奪され、無位無官となる。
だが、ベルゲングリューンが集めた精鋭達だけあって、その通知を受けても誰一人として動揺するものはいなかった。
「新帝マクシミリアン・ジークフリード陛下がフェザーンに入り、全権を掌握した後は、この戦いに加わった全ての将兵に三階級特進を持って報いる」というのが、今や賊軍となった自称討伐軍の公約であった。
「あの女、もうおしまいね。今の帝国軍で、お前を敵にして勝てるわけがないわ。それに、キル子とエヴァは親友だったのよ。二人とも平民で、父親が戦死して孤児になったから親戚の家で養われたって境遇がそっくりなんですって。だから、二人の間には、いつも誰も入って行けないような強い絆みたいなものを感じていたわ。お前とミッターマイヤー元帥のようにね。二人はお互いの娘の名付け親にもなっているから、姉妹も同然だったのよ。そんなキル子や子供達を無慈悲に殺した皇太后に、いくらミッターマイヤー元帥でももう忠誠を捧げることはないでしょう」
トリスタンの居住区域にある貴賓室で、エルフリーデは、断定的に言った。
隣室では腕白盛りの息子達が元気に走り回る声と、それを嗜める乳母の声に混ざって、まだ幼児の娘の泣き声まで聴こえてきて、今のところは、戦艦の内部とは思えない長閑さだ。
だが、ミッターマイヤーの性格を知るロイエンタールはまだ少し懐疑的だった。
「俺もそう思うが、あの男は俺達と違って物事を斜めから見たりしないからな。皇太后が、第二帝妃と子供達を自分が殺したなどという根も葉もない噂を信じるのかと言って、泣いて演技でもすれば、わからんぞ」
「斜めにしか見られないひねくれ者で悪かったわね。でも、いくら軍の中しかしらない朴念仁でも、大元帥にまでなった人が、そこまで単細胞かしら?でも、もし本当にミッターマイヤー元帥がお前を討伐しに来たら、お前は親友と本気で戦うの?」
「ああ、そうなるな」
あまりにもあっさり言い切る男に、エルフリーデは絶句した。
「それにしても馬鹿な女だ。なまじ小利口なのが災いしたな。大人しく秘書のままでいれば今頃は、伯爵家に適当な婿でも貰って、本人は高官に取り立てられていたかもしれんのにな。父親の跡を継いで帝国初の女尚書ということも有り得た」
女性蔑視の典型のような男の言葉に、エルフリーデは意外な目を向ける。
「お前の口からそんな言葉が出るとは思わなかったわ。いつからそんなフェミニストになったのかしら?」
皮肉を返すエルフリーデに、ロイエンタールは、冷静に金銀妖瞳を光らせる。
「俺一人がどんな偏見を持とうが、世の流れまでは変えられんさ。実際、新王朝になってから官界でも財界でも女の管理職なんぞ珍しくもなくなっている。現にあの女は最後は軍で幕僚総監にまで取り立てられたのだぞ。まあ、どんな手練手管を使って先帝陛下を籠絡して皇后になったのかは知らんが、所詮、一時の感情など直ぐに冷めるものだという教訓だな」
「じゃあ、お前はどうなの?お前こそ、一時の感情で私とこうなって、結局17年も人生を棒に振ってしまったのではなくて?」
エルフリーデは、予てからの疑問を口にしてみた。
この男にナイフを突き付け、殺しに来て、逆に襲い返されてから早17年。丁度人生の半分をこの男と生きてしまったことになる。
先帝と皇太后以上に「一時の感情」の上に成り立った関係だった。
以来、邸に居座り続ける自分を追い出す気配もなく、その内、次々と子供が産まれ続けていることで、なし崩し的に家族のような形になってしまっている。
今となっては、邸の主人の6人の子の母親である彼女を追い出すなど、使用人達には考えられもしないし、主人自身にも明らかにその気はないようだ。
自分の代でロイエンタール家を終わらせる予定だった男にしてみれば、不本意この上ない結果であろう。
「さあな、俺にもわからん。女と暮らすことも、うるさい子供が家にいることも性に合わんと思っていたからな。だが、俺は今の状態が別段嫌ではない。何故か理由はわからんが、つまりは、そういうことだ」
それだけ言うと、ロイエンタールは、自分の表情を隠すようにマントを翻して艦橋に上がる為に部屋を出て行った。
エルフリーデは、呆気にとたれながらそれを見送ると、即時に頭を切り替えて、フェザーンとの専用高速回線を自分用の端末に接続した。
先月、国務尚書の公邸で開かれた晩餐会で着用したドレスと宝飾品が、委託競売サイトでかなり値が上がっていた。
先帝の喪中ということもあり、全体に地味な装いではあったが、同年代の一般庶民の平均年収を軽くオーバーする金額の品には違いなかった。
この分だと、来月にはまたオーディンへの送金額が増える見込みだ。
端末画面を眺めながら、エルフリーデは、少しだけ唇の端を上げて満足そうに微笑んだ。
エルフリーデは、どれ程高価なドレスや宝石でも、一度身に付けたものは二度と着用しないことをポリシーとしてる、帝国一、いや同盟領でこんなことをする人間は存在しないであろうから、実質宇宙一の浪費家夫人として知られていた。
ロイエンタール家の金を湯水の如く使い、生活費を除く元帥の所得の殆ども彼女の贅沢品の購入に消えていくと、非難と羨望の入り交じった批評をこの17年間ずっと受けてきた。
しかし、彼女が新たにつくらせた高級品を一度だけ身に付け、マスコミに公開して更に付加価値を上げた上で競売により現金化している本当の理由を知る者は少なかった。
エルフリーデは、売上金を一度として自分の為に使ったことはなかった。
手数料を差し引かれて入金されたお金は、匿名でオーディンの複数の個人や団体の口座に振り込まれていた。
どれも、リップシュタット戦役後の生活が一変した元帝国貴族の娘達や、彼女達の支援団体で、同じリヒテンラーデ一族の者もいれば、ブランシュヴァイク家やリッテンハイム家の一門の者もいた。
帝国の貴族女性は、原則として自分の人生を自分で選べない。
家の当主である父親や兄弟がリップシュタット連合に入るか枢軸派に属するか、又はあくまでも中立を維持するかで運命が変わった。
中にはヒルダのように本人の才覚と親の理解に恵まれて、新体制で一族郎党で甘い汁を吸っている者もいるが、ごく稀なケースである。
流刑地で無為な毎日を過ごしていた時、一族の少し年上の女性が毎日呪文のように、絶望しかける従姉妹達に向かって言っていた。
「大丈夫よ。ローエングラム公のお傍には、私の同級生のヒルデガルド・フォン・マリーンドルフという人がいるの。彼女はちょっと変わっていたから、女学院ではなかなか近寄り難くて、親しい方ではなかったけど、一応元クラスメイトだわ。同じ立場の門閥貴族の娘ですもの、彼女が進言して、必ず恩赦を願い出てくれるはずよ。だって私達は、元々何も悪いことはしていないのだし、こんな女や子供をいつまでも流刑にしていてもしょうがないでしょう?」
その言葉に、エルフリーデ達は、僅かに希望を託した。
しかし、バーラトの和約で名目上同盟との戦争が終結しても、ラインハルトが新皇帝に即位し、新帝国が発足するという絶好の機会が訪れても、リヒテンラーデ一族への恩赦はなかった。
どうやら、マリーンドルフ伯爵令嬢の頭の中に、自分と同じ門閥貴族に生まれた女性達のことはないらしい。
「彼女は、自分一人が特別な存在だと思っている人だったわ。今にして思えば、同じ教室で学んでいても、同級生の私達など、開校以来の才媛である彼女にとって、全く眼中にない存在だったのよ。彼女に私達の痛みをわかってもらえると思った私が甘かったわ。彼女に私達の辛さや悲しさはわからない。いえ、多分、彼女は自分と自分が認めるごく一部の人以外の痛みや苦しみを全く理解できない人間なのよ」
従姉は、そう言って、ヒルダから恩赦を働きかけてもらうことを諦めた。
後に、エルフリーデは、この時のこの女性の言葉が、正鵠を得ていたことを痛感する出来事に、2回程遭遇することになる。
一度目は、ロイエンタール邸でフェリックスを身ごもり、その処遇について皇帝も交えた議論がなされた時。この時は、グリューネワルト大公妃が正論を唱えて無事だったが、もし、あの時、大公妃がいなければ、自分は堕胎させられるか、愛する息子フェリックスと引き離されていたことだろう。
ヒルデガルドという女性は、自分自身は息子のアレク帝を溺愛しているものの、他人の我が子に対する愛情は理解できないらしい。
それを確信したのは、二度目である今回のキル子の事件である。
流刑地にいた時のエルフリーデ達は、もしかしたら、このまま自分たちはここで朽ち果てるのかと、一時は絶望的になった。
かと言って、どうやってここを抜け出せばいいのかわからない。
元々貴人の流刑は、単に辺境惑星に送られて、最低限の衣食住の中で生活するのみで、強制労働をさせられるわけでも、格子の填った監獄に入れられるわけでもない。
一応、衛兵はいるが、緩やかな監視の下に、粗末だが生活に必要なものは全て揃っている田舎屋で、地元の者達に衣食の世話を受けながら詩作や読書など金の掛からない趣味に興じて生きるのが常だった。
中には権力闘争の激しいオーディンの宮廷に嫌気がさし、流刑地にそのまま根付いてしまう者も少なくなかった。
しかし、人一倍気位いの高いエルフリーデには、その選択肢は最初からなかった。
なんとしてでも、必ずや、もう一度オーディンに帰り、一族の無念を晴らし、昔の栄華を取り戻すのだ。
彼女と年齢の近い数名の少女達もそう考えていた。
しかし、流刑地の中では比較的自由とはいえ、宇宙港の警備は厳重で、オーディンに辿り着くまでには、何度も民間船を乗り継がなければならない。
具体的な脱出方法がわからないまま、エルフリーデは、自分を含む流刑地からの脱出を強く望む同年代の一族の3人の少女と、一人成人していたヒルダの元同級生の従姉の女性の計4人で、脱出計画を練った。
全員、父や兄弟を処刑されている娘達だった。
中には、10歳になったばかりの弟を殺されている者もいる。
そして、全員母親や祖母を流刑地で亡くしていて他に近しい身寄りがいないのが共通していた。若い彼女たちは順応できても、年配者ほど環境の激変についていけなかったのだろう。加えて、皆、夫や息子を無残に処刑されていることで、精神的ダメージも大きく、殆どは風邪をこじらせての肺炎や、ちょっとした感染症が長引いた末の死だった。
やがて、新帝国歴に改まった6月下旬のある日、4人の中で一番年上の従姉が、4人分の精巧な渡航証明証を持ってやって来て、これで4人でオーディンに帰れると言った。
いったいどうしてこのようなものを手に入れられたのか、誰もが不思議がった。
勿論、大金を支払えば入手できないものではないが、最低限の現金の所持しか認められていない流刑人に、そんな金はない。
不思議そうな目を向けるエルフリーデ達に対して、
「私は貴女方と違って一度結婚しているから生娘ではないわ。これくらい、宇宙港の旅券発行係官を二人も落とせば喜んで作るわよ」
と、彼女は殊更明るく言って見せた。
確かに彼女は、下級貴族の母親を持つ庶子であり、政略結婚をさせる手駒として邸に引き取られて、リップシュタット戦役が始まる前年に、19歳でブラウンシュヴァイク公の甥の一人に嫁がされた。
格別珍しくもない典型的な貴族の政略結婚だったが、リップシュタット戦役の後、あっさり離婚して実家に帰ってきていたところを見ると、夫との間に特に愛情が芽生えることもなかったようだ。
「でも、最初からキズモノの私と違って、あなた達は、純潔を守らなきゃダメよ。いい?処女は絶対に、この世で一番愛してる男性に捧げるのよ」
あっけらかんと言い切る彼女は、一見蟠りはないように見えたが、エルフリーデは、それが虚勢であると感じ取っていた。
民間船の出港日である決行予定日まであと3日。
旅券を入手した彼女は、特に気にしている様子は見せなかったが、エルフリーデは、夜、ふと眠れなくて部屋を出ると、狭い居間で、一人すすり泣く彼女の後ろ姿を見つけてしまった。
エルフリーデは、その背中に向かって、静かに手を合わせた。
何時の間にか涙がこぼれ落ちた。
『ありがとう…そしてごめんなさい。私達の為に…いつか…いつか必ずこの御恩をお返しいたします…』
この日から、エルフリーデは一族の復興を誓った。
そして、予定通り4人は偽旅券でオーディンに帰り着くことができた。
エルフリーデ以外の3人は、旅券を手に入れてくれた従姉と一緒に、一先ず郊外の彼女の母方の実家に身を寄せるという。彼女の母親は、だいぶ昔に亡くなったそうだが、下級貴族の祖父母はオーディン郊外に健在で、特別富豪ではないが、孫娘とその親族の少女達の面倒を見るくらいの余裕はあるという。
エルフリーデも一緒にと誘われたが、他に頼れる親族がいると嘘を付いて、オーディンの宇宙港で彼女達と別れた。
エルフリーデは、ローエングラム陣営の主要人物達の内、せめて誰か一人でいいから一矢報いなければ気がすまなかった。
何度か下見に歩いたが、最も憎い首魁であるラインハルトの住まう新無憂宮は、流石に警備が厳重過ぎた。
次に、同じ門閥貴族の娘として、一言言ってやりたかったマリーンドルフ伯爵令嬢は、同じく伯爵邸の警備が強化されていて近づけそうになかった。
そんな中で、偶々投宿したホテルの近くに私邸があるという軍最高首脳の一人であるロイエンタール元帥は、その立場に似合わず、邸の警備が手薄で、苦労することなくあっさりと庭の植え込みに侵入できた。
そして、帰りを持った男と遭遇してからの顛末は、語るまでもない。
従姉がその身を犠牲にしてまで守ってくれた彼女の純潔は、仇の男の手によって、無残に奪われてしまったのだ。
今更親族達に合わせる顔もなく、そのまま憎い男の邸に居着いてしまって月日が流れた。
男は、まるで家賃分を請求するように、エルフリーデに宛てがわれた寝室を毎夜訪れ、彼女を蹂躙していった。
最初は苦痛しかなかった行為が、何時の間にか、憎いはずの男と心を通わせる手段となっていったのは、いつの頃からだろか?
気が付けば、その男の子供を6人も産んでいて、正式に結婚もしていないのに、邸の使用人達は、彼女のことを「奥様」と呼ぶ。
そして、この男が、帝国元帥であると同時に、王侯並みの富豪だと気付くのに時間はかからなかった。
エルフリーデは、ネット回線を通じて密かに有志を募ると、旧貴族で不遇を囲っている令嬢や夫人達の社会参画を支援する団体の立ち上げを推進した。
世間の顰蹙を買う程大袈裟な贅沢品を購入して注目をさせ、資金集めをする方法は、10年程前に考えついた。
エルフリーデの援助のおかげで、一緒に流刑地を脱出した3人は、あれから大学でそれぞれ専門分野を学んだ後、台頭著しいフェザーン企業に就職し、全員同僚の男性と結婚してそれぞれ家庭を持っている。
今では経済的に安定したことから、支援される側からする側に回り、エルフリーデの頼もしい同士である。
彼女が影で人知れずこのような活動をしていることを知っているのは、ロイエンタールとフェリックスの名付け親で家族ぐるみの付き合いをしているミッターマイヤー夫妻、そして、エヴァンゼリンの親友でこのような活動に関心を寄せていたキル子であった。
キル子の子供達が相次いで不信な死を遂げ、キル子自身も罪を悔いて自害したと聞いた時、エルフリーデのリヒテンラーデ一族の血は、咄嗟に黒幕をヒルデガルド皇太后と確信した。
そして、そもそもキル子を寵姫とするお膳立てをしたのが自分であることを思うと、罪悪感に苛まれた。
エルフリーデも、勿論、このような事態を想定してキル子をラインハルトの寵姫にする画策を行なったわけではない。
皇后となり、すっかり皇帝の唯一の伴侶に収まったと思い込んでいるあの小賢しいマリーンドルフの小娘の足元を掬ってやりたいという小さな意地悪のつもりだった。
勿論、寵姫となるキル子自身がラインハルトに思いを寄せていることが判った上でのことであり、ラインハルト自身も親友であるキルヒアイスの縁者ならば憎からず思うはずだという計算もあった。
しかし、エルフリーデも、何がなんでもキル子を寵姫としようと考えたわけではなく、二人の仲がそれ以上発展しなければそれはそれで仕方ないとも思っていた。
しかし、ラインハルトは、エルフリーデの想像を遥かに超える程にキル子を熱愛し、ヒルダに与えるつもりのダメージは、当初の予想を遥かに上回る程大きなものになってしまった。
こうなると、元々門閥貴族で一族郎党も多く、父親が国務尚書という要職にあるヒルダを敵に回すことは、これといった係累のいないキル子にとって危険なことであるとエルフリーデの敏感な嗅覚は捉えていた。
特に、人の耳目の多いに宮中では、キル子を寵姫に迎えて以来、皇帝と皇后の間に夫婦関係が無くなったことは、どこからともなく知れ渡り、エルフリーデやエヴァンゼリン等高官夫人達の耳にも入っていた。
エルフリーデは、キル子が寵姫となる切っ掛けを作った責任を感じ、第二皇子を出産した直後の彼女に、これ以上の出産は、皇后派の不快感を招く恐れがあるので、今後は避妊することを勧めた。
どうやら、彼女は妊娠し易い体質らしく、加えて皇帝の寵愛を一身に受ける身では、このままでは毎年のように皇子や皇女が産まれるだろう。
フェザーン人のことだから、全く皇帝の子を産まない寵姫などは税金の無駄遣いだと言いかねないが、当時、皇女と皇子を一人づつ出産したキル子はこの時点で充分寵姫の役割を果たしていた。
ラインハルト自身も、キル子に対して、殊更たくさんの子の出産を望んだわけではないという。
それどころか、自分の後継者には既にアレクサンデル・ジークフリードがいるので、キル子の身体への負担を考慮し、子供などいなければいないでも構わないとさえ言ったという。自分には、キル子だけがいれば充分だと。
アレク皇子の懐妊が切っ掛けで結婚することになったヒルダとは対照的である。
ともあれ、皇帝にたくさんの子が産まれることは、旧王朝の時代なら単純に目出度いこととされていたが、医療が発達し、乳児死亡率が極端に低いフェザーンでは、多過ぎる皇位継承資格者はかえって宮廷闘争の原因になる。
エヴァンゼリンも加わり、皇后派を刺激しないためにも、キル子に再度避妊を勧めたが、二人の気遣いを有難いと言いながらも、キル子は自然のままを通す意思を曲げなかった。
理由は、自分の野心の為や立場の安定を図る為ではなく、小さな命を手渡す度に、戦争の中で生きてきたラインハルトに、名もない民の一つ一つの命の重さを知って欲しいからだと言う。
「ラインハルト様は、偉大な方ですが、たくさんの尊い命を犠牲にして今日の平和を築かれました。キルヒアイスの両親は優しい人達でしたが、父の戦死の報を受け、一人ぼっちになってしまった時の心細さを今でも忘れられません」
同じ体験を持つエヴァンゼリンが、目に涙を溜めてキル子の手を握り締めた。
「私は、もう二度と私のような思いをする子供達を作りたくないのです。時に戦わなければいけない事もあるのはわかっています。私には、難しい政治や戦略の話はわかりません。でも、それでも私は、ラインハルト様に、もうこれ以上戦争をして欲しくないのです」
エルフリーデは、やっとこの平民出身の女性の崇高な魂に触れた気がした。
「皆あの方のことを、軍神とか獅子帝とか言いますが、子供達を抱き上げる時のあの方は、本当に普通の優しい父親なんです。だから、私がたくさん子供を産むことで、その子達の同級生が戦災孤児にならないようにって、ラインハルト様に言うつもりです」

エルフリーデは、キル子の言葉を思い出し、また涙が溢れてきた。
そう言えば、彼女が寵姫となり、皇帝の子を次々と産むようになると、ラインハルト帝は、同盟に対して更に寛大になっていった。
リヒテンラーデ一族にも恩赦が与えられ、リップシュタットで敵対した貴族達にも社会復帰の道を作るよう民政省に指示を出している。
「完全な勝利よりも妥協的な平和を」との声は、以前は少数派だったが、今ではその方が正論であるとみなされている。
政府内でも、つい何年か前までは軍事独裁政権の色濃い帝国内では、武断派の方が圧倒的に優勢だったが、ここ最近では文治派の勢力と拮抗しきて、よいバランスになりつつあるという。
どれ程政治戦略に優れていようとも、結局皇帝の心を動かすことができなかったヒルデガルド皇后よりも、真に平和を願い、その思いが皇帝を動かしたのは、第二帝妃であるキル子ではなかったか?
そう思った時、エルフリーデは、そのキル子を死に追いやったヒルダを決して許さないと心に決めた。

コメント一覧

べる (08/01 07:48) 編集・削除

キタ━(゚∀゚)━!!!!!
来ました、トリスタンに全部載せ!!

このバージョンのロイエルの老後を妄想して、
今、ニヤニヤ中ですw
・・・・・・・・・・・・
以下妄想w
寿命まで生きるロイエル。
(途中でロイロイが負傷死もアリ)。

ロイロイの死に際、
エルちんが増やしたロイロイの子孫大集合www
死の床から見回した結果、かなりの数になっていてロイロイ微笑。

ロイ「お前の血族も大分増えたな。満足か?」
エル「いいえ、まだ足りないわ。今度はわたくし、お前と結婚したくなりましたの。いいわね?」

とか言って、死ねばいいよ…。(ううう)
・・・・・・・・・・・・・・・


ところで、今回のじぇりさんのこの書き方なんですが。
よしりんも原作を書く時に、こうやってバッサバッサと心情表現を省きまくって、物語をスピーディーに進めて行ったのだと思います。
そして、そうだからこそファンの心をがっちり掴んだのだと思っています。

葵猫 (08/01 10:02) 編集・削除

おはようございます!
現在撃墜王まで観劇中休み&楽しみな新刊書籍も待ち期間で、こちらの更新が毎日楽しでなりません。
なるほど、エルちゃんのヒルダへの反感、逆恨みとは言えませんね。
確かに学校の同級生をはじめとする、同じ階級の女性や子供を全く省みないのはちょっと…
それに「情けをかけてやった」なんて思ってるけど、情けかけたのは、あなたじゃなくて、アンネローゼ様ですから。
あのときの提案は、あくまで皇帝姉弟への点数かせぎ。
リセット後、やり直したい気持ちが災いしてエゴイズムに走ってますよね、ヒルダ。

色々考えてしまいます。
潔癖が災いして、妻を追い詰めたラインハルトと、漁色家のはずか一人の女と添い遂げつつあるロイエンタール。
贅沢はしなかったけどエゴイズムの化け物なヒルダと、浪費贅沢の権化と言われながら、困窮する同胞を救うエルフリーデ。
彼女が娘に託した野望の行く末も気になります。

非公開 (08/01 12:54) 編集・削除

管理者にのみ公開されます。

葉子 (08/01 14:53) 編集・削除

父(49歳)「この戦争が終わったら入籍しようと思うのだが」
長男(17歳)「…今からですか?(それ死亡フラグって言いませんか?)」
-------------------------------------------------
冗談はさて置き、正直、「避妊しません」宣言はデリカシーに欠けると思いました*。ヒルダかわいそう(涙)。
あと、エルフリーデが平民出の第二皇妃に同情するのが自分的にはちょっと意外でした。「お互い潰しあって滅びるがいい、ローエングラム一族め」と思っていたので。6人産んで人間丸くなった?あとは自分を守り続けた内縁の夫の愛のなせる業?
→「見よ、エルフリーデが心を開いておる…奇跡だ…」@風の谷のナウシカ

*…いろいろひねくれ者ですみません(土下座)。

※で、もう一つの候補は強そうな雰囲気のバスティアン/セバスティアンでございました(=尊ぶべき者、とかいう意味の名前。サッカーW杯ドイツ代表のシュバインシュタイガー氏より)。
Jeriさん鋭い。どうして分かったんだろう?

エルダ (08/01 20:27) 編集・削除

私も「避妊しません」はヒルダが可哀そう過ぎだし、寵姫の分を超えすぎではと思いました。これじゃあキル子が皇帝の寵愛を笠に着た、分を弁えない女として処分されても自業自得では。

皇帝夫妻に夫婦生活がないことが高官夫人たちの間にも知れ渡った時点で、クララさんのほうでキル子が妊娠しないよう、避妊の手まわしをするべきで、それを怠っておいて、第5話の
>>「いったいいつからローエングラム王朝は、ゴールデンバウム王朝の恐怖政治を模倣するようになったのですか? 私も夫も罪のない女性を無理矢理陥れるような方に忠誠を誓ったつもりはございませんわ」
は、ないでしょうとクララさんに言いたいですね。フェザーンの産科医療の知識があって、キル子とヒルダの関係の危機にも勘付いていた割にはお粗末すぎではないでしょうか。ラインハルトの次にこの人もアレだなぁと思いました。

エルフィーに関しては葉子さんと同じく
>>「お互い潰しあって滅びるがいい、ローエングラム一族め」
というのがエルフィーだと思っていたので、どこかで転生者が憑依した可能性が頭から離れてくれませんw

>>キル子を死に追いやったヒルダを決して許さない
次はヒルダとアレク、マリーンドルフ一族を滅ぼしてやるという宣言ですね。

非公開 (08/01 20:45) 編集・削除

管理者にのみ公開されます。

エルダ (08/01 20:51) 編集・削除

クララに関する自分のコメにセルフツッコミ。

フェザーンに我が物顔で乗り込んで自治権を奪った挙句に帝都にしたローエングラム王朝に対するレジスタンスの一員であれば、クララさんが事態の悪化防止を怠ったのも納得いくんですがね。

上手くローエングラム王朝高官のルッツを引っかけて妻の座に収まったクララの任務は、夫の仕事の付き合いから情報を集めてローエングラム朝の弱みを探ること。
キル子が第2帝妃となり、キル子付女官長となって後宮からローエングラム王朝切り崩しの工作を仕掛けていった……というのは黒すぎでしょうか。

クララがレジスタンスだったとしたら、原作のウルヴァシーにはロイを陥れる勢力に便乗して、ハニトラにかかったルッツを始末する人間が紛れていたという可能性もありそうです。

ゆうやん (08/01 21:35) 編集・削除

ミッターマイヤーの下した決断とここに出てない他の元帥の決断はいかに?次回が楽しみです。

あと私も葉子さんやエルダさんと同じで「避妊しない」宣言はちょっとどうかしらねぇ、と思ったクチです。
本文(6)で出ているように「避妊?何それ、何の冗談だ?」な世界観であろう帝国育ちですからキル子さん的にありえない選択肢だったんでしょうけど、何というかヒルダの存在意義(と彼女が考えてるであろうこと)を土足で踏み荒らしたな~感がありました。

それを「私のほうが愛されてるのよ、ホホホ!」的にやられたらまだしも、100%悪気なくやってるので余計性質が悪かったなぁ、怒りの矛先が内に篭って篭って今大爆発!!

私、そもそもそこまでヒルダ嫌いでもなかったんですけど、彼女の進む修羅道に何か段々もう少し何とかして~という気分にww
再リセットの時の彼女の選択がどうなるか・・・。結末を一人であーでもないこーでもない考えてます

Jeri (08/01 21:41) 編集・削除

>べるさん

>エルちんが増やしたロイロイの子孫大集合
結局、ロイってあのまま反逆せずに生き延びてたら、若い頃の「ロイエンタール家は俺で終わり発言」をみんなにからかわれる程、うじゃうじゃ子孫増やして笑いのネタになってたかも。

>バッサバッサと心情表現を省きまくって
違うんですよ。
前のごんさんへのレスにも書いたんですが、これ、最初4回くらいの「あらすじ」を書くつもりだったんです。
だから、今でも所々描写を飛ばしてます。
一方で、小説化する(ことはないとは思いますが)場合の覚書として、細かく決まっている台詞や描写はそのまま書いてありますから、時々小説、時々あらすじみたいな不安定な文章になってます。
もし、いつかこれをきちんと小説にする時(ないとは思いますが)は、バッサリ書いてないところにきちんと肉付けするつもり(というか、小説としての体裁としてそういう必要があると思っていた)でした。
でも、この「あらすじもどき」の方が、読者受けするなら、オリジナル投稿作も、この手法で書いた方がいいのか?と悩んでますw

>葵猫さん
>潔癖が災いして、妻を追い詰めたラインハルト
ラインハルトのこの手のことに関する感覚が、著しくズレているのは、アンネローゼのトラウマと幼年学校卒でずっと軍隊の中しか知らない世間知らず故ということで、もう本人を責めても仕方ないです。
問題は、彼に唯一換言できる立場のアンネローゼが、「何も口出ししないのが美徳」とでも思っていたかのようにほんとに何も言わなかった点だと思います。
原作準拠でも、もし彼女が隠棲せずに、ラインハルトに向かって「もういい加減に戦争やめなさい」とでも言っていたら、随分と死人が減った可能性もあります。
まあ、当のヒルダ自身がラインハルトの更なる信頼を勝ち取る為に、自分から積極的にキル子をプッシュしていたのも原因だともおもいますが。
新田次郎の小説「武田信玄」だったか井上靖の「風林火山」だったか忘れましたが、嫉妬深くて気性の激しい正室の三条夫人を遠ざけ、若い側室のところばかりに通う晴信(信玄)を母親である大井夫人が諌める場面があります。
台詞の詳細は忘れましたが、「どんな女でも、夫から疎んじられ、他の女に愛を奪われれば、嫉妬もするでしょうし、言わなくてもいいことまでつい言ってしまうものです。正室でも側室でも、どの女のところにも平等に通うことができない男に、側室を持つ資格などない」という意味の耳の痛い換言をします。
もちろん、これは多分史実ではなくフィクションでしょう。
でも、天下の名将武田信玄が、この母の換言を尤もと受け入れ、以後少しばかり正妻への態度を改めるという描写があります。
新田次郎か井上靖か知りませんが、歴史小説として見事な女性描写でした。
「何も言わない女が一番素晴らしい」というよしりんの極端に偏った女性観は、ある意味作者の分身であるラインハルトに相応しいのかもしれません。

>葉子さん
>死亡フラグ
す…鋭すぎかもww

>エルフリーデが平民出の第二皇妃に同情するのが自分的にはちょっと意外でした。
べるさんにもレスした通り、元々あらすじを書いていたんで、細かい部分の理由付けを記述していません。
ここのエルフィーは、まず、フェリックスの件で名付け親のミッタ夫妻とロイエンタールと暮らす以上、付き合わざるを得なくなります。
エヴァは平民出で元帥に出世した夫を持っている人ですから、いい意味で処世術に長けていて、年下でも貴族のエルた立てる態度を心得ています。
下手に出られればエルとて悪い気はしないでしょう。
その内、エヴァが作って持ってくるお菓子や料理にすっかりはまって(食べ物に釣られたとも言える)ロイとミッタとの関係もあり、フェリの名付け親で、当初男所帯(ロイ自身が女の使用人がいないとOVAで言ってましたし)のロイ家で子育てに苦労していたのを助けてもらったこともあり、いつしか身分越えてエヴァを認めるようになったということになっています。
キル子については、最初は、書いた通り平民の女をヒルダに嫌がらせするために利用しようという考えでした。
うまくいけば、それでローエングラム王朝などぐちゃぐちゃになれという気持ちもあったと思います。
でも、キル子は「女版キルヒアイス」ですから、貴族女性の扱いが上手(笑)且つ、血筋的に対人関係を築くのが上手いのです。大公女の身分を得た後も、伯爵令嬢のエルには丁寧に膝を折り、プライベートな席では上座を譲るような態度をとります。更に、同じ境遇からエヴァと親友になったことでエルも個人的に接する機会が増えます。ヒルダよりもずっと末端の人や少数派の不遇な人のことを考えているキル子は、エルの秘密の活動(?)にも賛同し、協力するようになっていきます。
こうなればエルも「この子、いい子だわ。幸せになってね」となるのは自然だと思います。
避妊の件ですが、これもそもそも「王朝」とか「皇帝」がある世界では、寵姫の仕事はとにかく皇帝陛下の子を産むこと。それができないでただ贅沢してるのは、単なる穀潰しみたいな考えが基本にある世界だと思います。
逆に、アンネローゼのようなタイプの寵姫こそ、単なる皇帝の夜のお楽しみの為だけで、国家にも皇室にも貢献していないと言えます。「寵姫の本来の役目は出産マシーン。避妊なんて職務怠慢」と、キル子も寵姫になるに当たって、一通りの行儀作法等を指南役(多分旧王朝からの再雇用者)に叩き込まれ、そうしなければならないと思っていたと思います。
ただ、その後、少し事情が変わってきて、二人くらい産めばもういいという雰囲気の中でも敢えて避妊しなかったのは、彼女なりに諸々の言い分があります。
一つには、たくさんの小さな命をラインハルトに与えることで、彼の戦争狂を矯正したいという思い、身寄りのない自分にとって、多くの家族がいる状況に対する憧れ、そして、何より肝心のヒルダ自身がラインハルトにいい顔をしたいが為に、表向き常にキル子の出産を祝福するスタンスでいることだったと思います。
ラインハルトに同行して公務に出発するのを見送る時、「国民も大公女殿下にまた可愛らしいお子様が授かるのを楽しみにしていますよ」みたいなことをずっと言われていれば、「この方は、個人的な感情よりも、常に皇后として国のことを優先して考えてらっしゃる立派な方だ。ならば私も精一杯寵姫の役割を果たそう。何よりも愛するラインハルト様のお子を産むのですもの」となっても仕方ないのでは…という裏設定です。

Jeri (08/01 22:23) 編集・削除

レスを書いてるうちにコメントが…
よくも悪くもヒルダたんの人気は凄い?

>エルダさん
非公開コメの方も書いていらっしゃいますが、女官という身分で、寵姫を避妊させるという皇統存続に対して逆方向のことを推進するというのは、流石に無理だと思いました。
この世界は、ローエングラム「王朝」という世襲絶対帝政なのですから、国家の安定の為には代々皇帝の息子が帝位を継承していくというシステムを構築することが正義であるという世界です。
GB王朝の世襲を皮肉って批判していたはずのラインハルトが、自分が政権を握ったらまた世襲皇帝になってしまうということが、そもそも一番矛盾を感じました。
でもそういう世界なのですから、もうそのラインで物語を作っていくしかありません。
皇統はラインハルトの子孫によってスムーズに継承されていくというのがこの世界の人にとって絶対的なものなら、血のスペアは多くあるに越したことはありません。
現在は、アレクという盤石な皇太子がいるので、一見必要ないようにも感じますが、彼が何か突発的な病気や事故で子供を残さないまま他界する可能性はゼロではありませんし、皇帝としての資質に欠ける場合も考えられます。
その際に、後継者の資格が、ラインハルトの血筋限定という条件付きの中でより選択肢を増やす為にも子供の数は多い方がいいというのは道理だと思います。
ラインハルトが、「俺はルドルフとは違う。絶対に自分の子孫だけに皇位を継がせたいなどと考えていない」というならば、彼は皇帝などではなく、大統領とか一代限りの終身独裁官とかになるべきだったと思います。
それが、「皇帝」になった時点から、彼自身がどう思っていようと、世襲王朝の開祖となったのに違いありません。
ですから、誰かが「とにかく陛下は、お子をたくさん作って皇統の安泰を…」と言って「俺はそういうつもりはない」と反論したとしたら「そんなら、皇帝になんかなるなよ」ってことになります。

>ゆうやんさん
原作読んだ当時から「私、陛下のことを愛してるとか、結婚とか、そんなの考えたこともありませんでした」とか「皇子は、別に欲しくて出来たわけじゃないません。たまたまそうなってしまっただけです」的なヒルダの態度がどこか空々しく感じていました。
だから、彼女と思いっきり対局の「ラインハルト様を愛しています」「愛するラインハルト様との子供を産みたいです」と素直に自分を表現するキャラを動かしてみたかったんです。

葉子@ひねくれ者で、夏。 (08/01 22:42) 編集・削除

>>二人くらい産めばもういいという雰囲気の中でも敢えて避妊しなかったのは、彼女なりに諸々の言い分があります。
第二皇妃に対しては…まず銀河イチの最高権力者に嫁いで、まったくの無私でいられたとは同性として思えないので、発言自体がとにかくダメ…。むしろ「反戦思想で産んでます」というのではなくて、「私の方が愛されてると自慢したいの」と堂々言って下さったほうが、ワタシとしては現実味をもった人間として彼女を受け容れられたでしょうwww
女を何年かやっていれば感じるだろうと思いますが、女は生涯を通じて、容姿に始まり、学歴、職歴、彼氏&ダンナのステータス、子供の数といった自分の『持ち物』で「自分が一番優秀なのよ!」って格付けし合ういきものですから、ストレートに子供の数=夫に愛された回数で差がつくこと→女として相当の屈辱(しかも同じ男だから)となります。
その辺に配慮をいたさないのが恋愛脳・スイーツ(笑)で「デリカシーがない」と同性の反感を買うのですね。ああ、女の敵は女。

※アンネローゼについては、皇帝が「ずっと美しいまま長生きして欲しいから」という理由で、皇帝の方が子作りを放棄している[原作第一巻あたりに書いてあった]ので、この点でアンネローゼの責はありませんよ~。

Jeri (08/01 23:08) 編集・削除

>葉子さん
>銀河イチの最高権力者に嫁いで、まったくの無私でいられたとは同性として思えない

意志薄弱な私は、そう言われるとそうかなと思ってしまってます。
じゃ、そういうことにします。(極悪)
私としては、ラインハルトの最愛の女性=キルヒアイスの女版みたいに単純に考えていました。
確かに普通ならあれだけの権力者の寵愛を独り占めにして、全くの無私な女って嘘っぽいです。
しかし、あえてラインハルトは、そういう女が好きなのです。
本当にそうかどうかはともかく、少なくとも彼にはそう見える女性が愛しい。
ヒルダに信頼を寄せたのも、少なくともラインハルトにとっては、彼女が公正無私な人格者に思えたからでしょう。
二人とも、本当にそうだったかどうかはともかくとしてw

>「私の方が愛されてると自慢したいの」と堂々言って下さったほうが、ワタシとしては現実味をもった人間として彼女を受け容れられたでしょうwww

堂々とは言わなくてもキル子ちゃんはそう思っていますよ。
ただ、自分が愛されているのと同等かそれ以上に、ラインハルトはヒルダを「必要」としていて、どちらが彼にとって大切なのかということを考えたら、なんせ相手は皇帝ですから、やっぱりヒルダなのかなという感じだと思っています。
でも、皇帝としてではなく、ただの一人の男としては自分の方が愛されていると思ってるのは確かでしょう。
キル子も、容姿は人それぞれの好みもあるレベルだと思われますが、育ちも家柄も学歴も智謀も、ついでにラインハルトにとっての「役立ち度」もヒルダには到底適わないと諦めている部分もあります。
だからこそ、彼女が少しでも自信を持てるものって、ラインハルトに愛された回数と子供の数なのかなというご意見は否定できません。

ごん (08/02 01:28) 編集・削除

どもです。

……トリスタン内がイゼルローン脱出時のユリシーズ(?)と化している……(爆)
弟達を静かにするよう追い回しているフェリックスが目に見えるような。長子はつらいよ。
「迷惑になるからあちこち行くなー! おいこらそっちは機関区!!」とか。

さり気に餌付けされてるエルフィがかわいい。エヴァの料理は最強。

エルフリーデのオークションは昔マザー・テレサがローマ法王だかからもらった車をオークションにかけて運営費にした話を連想しました。
トラウマ源のお母様の形見も最初は多かったろうから、結構旦那はサバサバしたかもしれませんね。

これは男性の例ですが、ドラフト時のすったもんだで実家が離散状態になったため、家族というものが恋しくなったのか、今時4人か5人の父になった野球選手を知ってます。
だから単純にキル子も子供欲しかったのかなーて私は思ってました。
帝妃として適切かどうかは分からないですけど。
では。

Jeri (08/02 10:13) 編集・削除

>ごんさん
戦艦内が珍しくてちょろちょろ走り回る弟達に手を焼く長男フェリックスってイイ!
まだ何もわからない妹の泣き声はうるさいし、保育所化してるトリスタン居住区。
父親登場。でも相変わらずうるさい子供達。
いいかげん煮詰まった時、エルが一喝。
「おだまりなさい!」
突然、シーン…
母の力強しw

>子作りの件
私も肉親縁が薄かった人が、子沢山を望む心理って有りだと思ってます。
自分は違う(親兄弟いるし少子出産だし)けど、身寄りのない多産体質の人なら子供いっぱい欲しいと思う人もいるかなと。
それに対して、正妻が嫌な顔一つせずむしろ「がんばって下さい」的な態度なら、それが本心ではないとわかっていても、少なくとも環境的には、自分は産んでいいんだという結論になって然るべきかと。
色々ご意見ありますが、私はそもそも世襲王朝なんてしたのが間違いだったと思ってます。
でも、とにかく世襲王朝が前提なら、後継者候補は可能な限り多いのが望ましいと思われます。
なんせ、現在世界中から世襲独裁が批判されているかの国でさえ、亡くなった将軍様は、母親の違う複数の息子達の中から、少なくとも彼(故将軍様)と金王朝にとって最も適した後継者として、資本主義に感化されてしまった長男や、性格的に弱いタイプとされている次男を飛ばして三男を選びました。
長子相続が原則の儒教国家で長男、次男を差し置いて三男が継ぐって、実は凄く異例のことだと専門家がテレビで言ってました。
原作では両親のいいところをとったアレクが理想的な二代目皇帝になっていくことを感じさせる終わり方をしていますが、本当にそう育つかわかりませんし、途中で病気や事故で亡くなったり、子供を残さないまま崩御の可能性もゼロじゃありません。
ラインハルトがもう少し生きていれば、父系の世襲王朝なら、多様な遺伝子を取り入れ(早い話が複数の女に産ませる)たくさんの子供を作ってその中から最も適した者を後継者(或いは王朝を支える重要な役職)に就けるのが望ましいはずなのですが、ラインハルトが変な潔癖性から、一人の女としかやらない方針なのですから、出産係のキル子としては、本人の気持ちとか周囲の思惑とか、ヒルダに対して道義的にどうかといったことは関係なしに、「避妊なし、子供は産めるだけ産む」は、正しい行動と言えると思います。

べる (08/02 12:38) 編集・削除

>この「あらすじもどき」の方が、読者受けするなら、オリジナル投稿作も、この手法で書いた方がいいのか?と悩んでますw

:描写の緻密が面白い場合と、
 テンポの良さが気持ちいい場合と色々あるじゃないですか。
 あと、作家個人の特性とかも。
 ですから、よしりんの場合は心情表現がうわなにをするやめちょ¥æ…¬¥¨øπ‘[/>÷µ∫≈†¥¨wwwwwwwwwwwwwww

葉子 (08/02 15:40) 編集・削除

>>「あらすじもどき」の方が、読者受けする
これに科白を適宜加えて、設定を若干スリムにしたら充分立派な作品です。なにより、この短期間にこの濃さでこれだけの分量が上がるのが凄い(↑上部にあるように「ダメな子ほど可愛い」という作者のロイエンタールに対する並々ならぬ愛を感じるwww)。

とりあえず、この世界ではロイエルが幸せになりますように&長男の眉間にこれ以上皺が増えませんようにwww

非公開 (08/02 16:38) 編集・削除

管理者にのみ公開されます。

Jeri (08/02 22:28) 編集・削除

>べるさん
私はつい余分に書きすぎてしまう癖があるので、オリジナルは、あらすじに若干の台詞を入れたくらいのものの方がテンポ良くて読み易いかもしれませんね。
よいヒントを頂きありがとうございました。
回を追うごとに「あらすじ」ではなくなってしまっているリセットですが、何とか12回くらいで決着をつけるつもりです。

>葉子さん
私の書くものは基本ロイエル幸せパターンです。
原作がアレだったんで、尚更なのかも。
逆に原作でちゃんと結婚してたり婚約してたりするカプについては、今回のように時々すごい変化球になります。

>非公開コメ様
はじめまして。ご購読ありがとうございます。

>ラインハルトって為政者としてど〜よって
同感なんですが、私は為政者としての前に、そもそも人間としてどうよと思ってしまいますw
あれだけ何百万人単位で戦死者が出る戦争をする理由が「ヤンと用兵家としての優劣を決めたい」ですから、考えてみれば他に類を見ない理由で大量殺戮してます。
ある意味まだ「豊富な資源のある領土を奪って富を増やしたい」とかの理由の方が正当性があるように感じます。
政治家としては、あんなに経済音痴でよくやってられたか不思議ですし。
でも、そんなお子ちゃまでおバカなラインハルトくんがかわいくてかわいくて堪らない…
ここはそんなオバサンのサイトですので、今後ともよろしくお願いします。

リセット-寂寞の皇后-(6)

獄中で自害した元第二帝妃キル子の遺骨は、本来なら罪人用の無縁墓地に放り込まれる予定だった。
それを密かに持ち出し、グリューネワルト大公妃の元へ届けたのは、今や宇宙艦隊司令部付の軍医大佐となっていたかつてのラインハルトの従者、エミール・フォン・ゼッレである。
遺骨と共に、死の間際にキル子自ら切り取った赤毛の遺髪も添えられていた。
ジークフリードと同じルビー色の髪の一房を手に取り、ついこの前まで弟と共に幸せそうに笑っていた小さな義妹の遺骨を抱きしめながら、アンネローゼは崩れるように泣き伏した。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
アンネローゼは自分を責めた。
こんなことになってしまった原因の一旦が、自分にもあるような気がしてならなかった。
皇帝の姉として、弟にもっと有効な助言をすることはできなかったのだろうか?
それよりも、ヒルダの気持ちがここまで荒んでしまったことに、どうしてもっと早く気付いてあげられなかったのだろう。
そう言えば、ラインハルトはキル子が出産する度に、母子と対面する前に必ずヒルダの元を訪れた。そして、決まり文句のようにこう言っていた。
「予は第二帝妃との間に子を授かることができた。これも全てカイザーリンの広い心のお陰である。感謝している。あなたは予の最高の皇后だ」
そう言われたヒルダは、柔らかな笑を絶やさずに、夫を見て必ずこう答える。
「私のことよりも、陛下にお子を差し上げる大任を無事果たされたキルヒアイス大公女を労って差しあげて下さい。そして、まず誰よりも先にお子様に対面されなければいけませんわ」
そう促されて、いそいそとキル子の元へ向かう夫を、ヒルダはどのような気持ちで見送っていたのであろうか?
あの微笑は本心だったのだろうか?
それとも、悲しみや憎しみを必死で覆い隠す仮面だったのだろうか?
ヒルデガルドという女性は、最初からこのような残忍な人だったのだろうか?
それとも、ラインハルトが彼女をここまで変えてしまったのだろうか?
どちらなのか、アンネローゼには解らない。
どちらも正しいような気がするし、違うようにも思える。
ラインハルトは皇帝の公務として、しばしばフェザーン星内や、持病を考慮してワープ航法を必要としない巡航速度で行幸可能な惑星の施設を視察に訪れることがあった。
当然、正妻である皇后が同行すべきところを、ヒルダは進んでその役目を第二帝妃に譲り、自らは皇宮で留守中の政務を代行することを申し出た。
その方が合理的で効率がよく、平民出の戦災孤児である大公女の方が、自分よりも市民に喜ばれるだろうというのが理由だった。
ラインハルトは、「カイザーリンの言うことはいつも理に適っている」と感心してみせると、以後常に公務にはキル子を同行させ、国民の間にも、ヒルダは「皇后」という名の皇帝の共同統治者のような役職で、皇帝の子孫をたくさんを残す妻の役割は、キル子のものであるというのが共通認識となっていた。
旧王朝に比べて簡素化されたとはいえ、皇宮が人の目も多く堅苦しい場所である所には違いない。
その点、開放感のある視察地で、ラインハルトとキル子は思う存分夫婦として睦み合うことができたはずだ。その証拠に、今思えばキル子の懐妊が判明するのは、殆どこうした公務から戻った直後だった。
ラインハルトが、キル子に子が産まれる度に「カイザーリンのお陰」と言った言葉の裏には、こういう意味もあったのではないかと、今更ながら思い当たるのだった。
アンネローゼは、ふと思い立って、ラインハルトが即位してからのローエングラム皇室の電子アルバムを開いてみた。
驚いたことに、ラインハルトが皇太子であるアレクサンデル・ジークフリードを抱いているものが一枚もない。
ヒルダやアレクと写っているものは、どれも宮廷行事や国家式典の際の型に嵌ったアングルで撮られたものばかりで、殆ど生活感がない。
これだけを見れば、それ程不自然な感じはしないが、キル子が第二帝妃となって皇室に入ってからは一変する。
普段着のごく普通の若い夫婦のスナップ写真や動きのある小さな子供達の立体映像が頻繁に登場する。
第三皇子を懐妊した際、臨月に入ったキル子のお腹を摩りながら、耳を充てる仕草をするラインハルトと、それを心底幸せそうに見つめるキル子。
今となっては、懐かしくもあり悲しくもある図だった。
微笑ましい皇帝一家の映像を見ると、逆にヒルダの孤独がひしひしと伝わってくる。
「ごめんなさい、ヒルダさん…ごめんなさい、キル子…私が…私が…」
アンネローゼは、二人の義妹達に詫びていた。
全ては、無神経な弟が原因で起こったことだ。
アンネローゼはそう確信していた。
ヒルダは、一生懸命自分の役目をこなすことで、ラインハルトに認めてもらおうとしたのだろう。政治的野心でもなく、一族の繁栄の為でもなく、ただラインハルトの愛をほんの少しでいいから得たい、それが皇后時代の彼女の偽らざる気持ちだったに違いない。
一方、キル子も無欲な女だった。孤児であり、養父母のキルヒアイス夫妻くらいしか身寄りのない彼女には、引き立てたい外戚もいなければ、そもそもそういう発想自体がない。旧王朝の時代から「寵姫の役目は皇帝陛下のお子をできる限りたくさん産むことである。如何なる時も陛下の御意に従わねばならぬ」というのが後宮のしきたりであった。まだ新王朝の展礼が定まっていなかった時期に寵姫となったキル子も、この作法を教え込まれて皇帝の寝所に侍った。
今考えてみれば、乳児死亡率が低いフェザーンの産科医療の中でこのような考え方は、時代遅れである。
GB王朝の宮廷で生きてきたアンネローゼも、この固定観念からまだ自由ではなかったのだった。
キル子は、ラインハルトの求めに応じて、子供を産み続けることが自分の仕事だと考えており、また、孤児である彼女にとっても、愛する人との間にたくさんの子を儲け、家族が増えることは願ってもないことであっただろう。
以前、皇子を産んで暫くして、久々に宮中晩餐会に出席した彼女に、ある廷臣が「これで大公女様も益々ご安泰ですな」とおべっかを言ったことがあったが、キル子は、そんなことは思ってもいないといった表情で大きな目を見開いた。
「私は…そのようなつもりは全くありません。次の皇帝陛下はアレク殿下ですし、私の子供たちは、人として幸せになってくれればそれで充分なのです」
小さな声で俯いてお腹に手を遣るキル子は、既に次の子を懐妊していた。
「でも、お子様がたくさんいらっしゃるということは、何事にも心強いですわ。皇后様にはアレク殿下お一人だけですから」
近くに座る別の高官夫人が、皮肉を込めて皇帝の寵愛を独占している平民出の寵姫にお追従を言ったが、キル子は取り合わなかった。
「私は、自分の為に子供達を産んだのではありません。ただ、陛下が愛して下さるので、いつも気がつくと自然とお腹に中にお子が宿っているのです」
近くの席で、アンネローゼは黙ってそれらの会話を聴いていた。
キル子にしてみれば、何気なくいった本音だったのだろうし、その時は特に気にも留めなかったが、あの時、周囲に皇后派の廷臣もいたように記憶している。もし、そこからヒルダの耳に入っていたら、彼女はどう感じたことだろう。
アンネローゼは、皇帝の姉として、嫉妬一つしないヒルダの賢明さと寛大さに感謝と畏敬の念を抱くと同時に、GB王朝の後宮で10年を過ごした経験を持つ身として、何か釈然としないものを感じていたのだった。
しかし、よりによってそれがこのような形で現れるとは、夢にも思っていなかった。
ヒルダには、弟の我儘をいつも許してくれていることをずっと感謝してきた。
それは、第二帝妃となったキル子も同じ思いでいたことだろう。
キル子と同じ墓に入ることを望んでいたラインハルトのことを思えば、今すぐにでもこの遺骨をオーディンに届けたい思いのアンネローゼだったが、今のヒルダが、絶対にそんなことは許さないだろうとわかっていたので、この遺髪と遺骨は、暫くの間、密かに自分の手元で預かることにした。
遺髪は、ジークフリードのものと同じように、銀製のロケットに入れ、ラインハルトとキル子の結婚式の際の写真を片側に貼り付けたものを作った。それを持っていてもらいたい人物が一人だけいる。
キル子の子供達を根絶やしにするよう命じたであろうヒルダだったが、どうしても一人手の届かない場所にいた少年がいた。
今年11歳になり、幼年学校生としてハイネセンに交換留学中だったラインハルトの第二皇子マクシミリアン・ジークフリードである。
彼はこの時、同級生のロイエンタールの三男と、兄貴分のように育ったフェリックスと次男と共に、ハイネセンの高等弁務官公邸でミュラーの保護下にあった。
報道管制が施かれていた遠いハイネセンで、彼がキル子の姦通罪による逮捕拘禁の第一報に接した時、既に姉も弟妹達も死亡とされ、母は自害していた。
肉親の相次ぐ死を知ったマクシミリアンは、すぐにフェザーンに戻ろうとしたが、彼の身の危険を察知したミュラーとフェリックスが引き止めた。
ロイエンタールの息子達の中で最も血の気の多い次男は、マクシミリアンの姉であるクラリベル皇女や、ミッターマイヤー夫妻の双子の兄妹とも同級生であり、皇女に仄かな思いを寄せていただけに、ヒルダへの怒りはマクシミリアン自身にも劣らなかった。
「皇太后と現皇帝を討伐して、マクシミリアンを新皇帝に擁立しよう!」
若さに任せて不穏なことを口走る少年をミュラーは窘めた。
「とにかく、ここではフェザーンで何が起きているのか全くわからない。今は軽率な言動は慎む時だ」
とは言ったものの、事態は最早明白であり、ミュラーにも何があったのか解らないが、ヒルダが以前の彼女ではなくなってしまったことだけは理解できていた。
間もなく、皇帝の名前で、ミュラーに対し第二皇子を帰国させるよう命じる詔勅が届いた。
もちろん、実際に発したのはアレク帝ではなく摂政皇太后ヒルダであることは誰もがわかっていた。
引き渡されれば、マクシミリアンは、確実に他のきょうだい達と同じ運命を辿るだろう。
しかし、ミュラーはまだ悩んでいた。
自分は、先帝ラインハルト陛下に絶対の忠誠を誓約しており、その先帝から、自分の死後はその忠誠の対象を自分の政治的後継者である摂政皇太后ヒルダに向けるよう遺言され、それを忠実に実行することを固く誓った身である。
しかも、未だ独身のミュラーは、実はヒルダが秘書官時代から、この美しく聡明な女性に、淡い思いを抱き続けていたのだ。
そのヒルダが、主君である皇帝陛下の后になったことで「この女性は所詮、自分には過ぎた方だったのだ」と思い込むことで諦めた。そうすることで一応の踏ん切りをつけたが、それでも、皇后となった彼女への思いを今度は、誰よりも強い忠誠心に変えて、陰ながら幸せを祈っていた。
その彼女が、夫の寵姫を笑顔で迎え、私生活面では完全に皇帝の寵愛を譲る形になったことが、ミュラーには痛々しく感じられていた。
しかもその寵姫が、自身も未だに敬愛している亡きキルヒアイス元帥の縁者だということが、また複雑だった。
だが、如何に長年の鬱積があろうと、先帝陛下の子であり、何の罪もないまだ幼い少年をみすみす殺されるとわかっていて引き渡すことなどできない。
結局、ミュラーは、当初は皇子の健康上を理由にして穏便に帰国を拒否した。
しかし、再三にに渡るヒルダからの帰国要請は執拗で、遂には自分の息の掛かったマリーンドルフ家の縁戚でもある宮内省の侍従を派遣して寄越し、これ以上命令に背くなら、ミュラーもフェリックス兄弟もその父親であるロイエンタール大元帥も皇帝陛下に対する叛逆と見倣されますぞと恫喝してきた。
この言葉に、温厚を旨としてきたミュラーも遂に腹を決めた。
ヒルダの勅使である管理官を拘束し、自分はあくまでも亡きラインハルト陛下のご意思で動くと宣言した。
そして、第二皇子や自害した大公女の命を奪うようなことは、決して亡きラインハルト大帝のご意思ではないと言い放った。
このミュラーの決断に対して、今や長く友誼を温めてきた同盟側の人々も賞賛し、協力を申し出た。
ミュラーにしてみれば、帝国の宮廷闘争に同盟を介入させることには慎重だった。仮にこちら側が勝利したとしても、それを機に同盟の発言力が増し、帝国政府に同盟の影響が及ぶことを懸念したのである。
だが、既に退役して歴史研究に勤しんでいるヤン・ウェンリーにしても、今や同盟軍の最高司令官を勤めるアッテンボローにしても、事は急を要し、後のことを心配するのは内戦終結後にしろとハッパを掛けた。
「内戦」という言葉に、俄にミュラー始め帝国側の人々に緊張が走る。
「心配すんなって。これを恩にきせて、後で帝国を牛耳ろうなんてセコイ考え、俺達は持っちゃいないさ」
ポプランの軽口に一同が一瞬和んだ。
「これは最早、民主主義と専制政治の争いなどという生易しいものではありませんぞ。ヒルデガルド皇太后というルドルフの再来の如き残虐な独裁者に対する正義の為の戦いである。及ばずながら、この老骨も元帝国軍人の端くれとして、ご助成つかまつる」
メルカッツの「正義の為」という言葉に、全員が奮い立った。
「ラインハルト大帝は、偉大な軍神であり改革者であったが、決して神ではなかった。時に人を見誤ることもあったでしょう。彼の遺言を金科玉条の如く実行した挙句に、また元のゴールデンバウム王朝の世に戻ってしまったら、それは彼の本意ではないでしょう。肝心なのは、もし今この場にラインハルト大帝がいらしたら、最も望むのは何かということではありませんか?」
この当時、歴史研究家として既に名を為していたヤンの言葉に、ミュラー始め、ハイネセンに駐留する主だった武官文官達の方針は決した。

新帝国歴19年8月30日、ハイネセンを発ったミュラー艦隊と同盟軍の一部義勇軍の連合艦隊は、第二皇子マクシミリアン・ジークフリドを擁して、帝国領に向かって侵攻を開始した。
その数合わせておよそ5000隻。
15年に渡る平和の中での軍事縮小の結果であった。
同じ頃、密かにフェリックスと連絡をとっていたロイエンタールは、エルフリーデと子供達を連れて、秘密裏にフェザーンを脱出。ゲルゲングリューンの指導の下、かつて自らの指揮下にあった艦隊をフェザーン回廊の同盟側辺境域で再編成し、ミュラー等の連合艦隊と合流する予定だった。数凡そ1万。かつて3万隻以上の艦隊を指揮していた元帥としては、こちらも平和による軍事縮小の影響が色濃かった。
親友ミッターマイヤーにだけは、フェザーンを発つ時に最後の通信を送った。
蜂蜜色の陰りのない男が、現在の軍首脳の中で誰よりも、亡きラインハルト帝に対する忠誠心が篤いことを知っているからだった。
恐らくこの男ならば、先帝の命令であるならば自分すら討つであろう。
そして、先帝の遺言に誰よりも忠実であることを信条とする彼ならば、たとえ何があろうとも、先帝が定めた後継者の命令に従うことこそが、正義だと信じることだろう。
このような事態になっても、ロイエンタールは、自分にない純粋さを持つミッターマイヤーを羨ましくこそ思え、決して愚かとは思わない。
ヒルダが、キル子に姦通罪の罪を着せ、ハイネセンにいる皇子以外のキル子の子供達を悉く暗殺したことは、今や重臣達の誰もが判っていることである。
しかし、表向きは、皇子や皇女達は皆事故か病死によるもの公表されており、キル子の自害は、子供達を亡くした悲しみと自らの罪を悔いてのことだとなっていた。
ロイエンタールもエルフリーデも、勿論、そんな話は信じていない。
だが、ミッターマイヤーは、未だに迷っている様子だった。
「公式発表が嘘だという証拠もどこにもない。いや、もし巷の噂が事実だとしても、それは皇太后のご意思ではなく、点数稼ぎをしたいどこかの跳ね上がりの勇み足という可能性もある」
と言って、ヒルダとの正面対決を躊躇した。
しかし、ロイエンタールは、元々何故か理由は解らないが、ヒルデガルドという女性に素直に心服できない自分を、彼女の宰相主席秘書官の時代から感じていた。その理由は、単に彼の女性不信とは全く別物だった。そして、今やっとその理由の輪郭のようなものが見えつつある。
自分はあの女には生涯膝を屈したくない。
自分だけでなく、自分の女も子供達もあの女の息子に膝を折らせたくない。
これがロイエンタールが反逆者となった第一の理由だった。
ただし、彼は当初、この件に現在安定した生活を築いている部下たちをできるだけ巻き込みたくなかった。
ところが、彼の片腕とも言うべきベルゲングリューンが、真っ先に同行を願い出た。
考えてみれば、キルヒアイスの元部下で、今でも彼を崇拝しているベルゲングリューンにとっては、当然の選択だったのだろう。
ロイエンタール艦隊は、フェザーン回廊の出口で、無事、ミュラー等の連合艦隊と息子達、そして、これから彼等の「マイン・カイザー」となるマクシミリアン・ジークフリード皇子との再会を果たした。
マクシミリアン皇子は、少し赤みがかった金髪に、青玉色の瞳をした聡明そうな少年で、出会った頃のラインハルトとジークフリード・キルヒアイスの面影を当分に併せ持っていた。
「この度は、大元帥をこのようなことに巻き込んでしまい、申し訳ありません」
11歳とは思えない思慮深さは、亡きキルヒアイスを思い起こさせる。
臣下への忠誠ではなく、握手を求める仕草に、ロイエンタールはいつもの典雅な動作でその手を取った。
ベルゲングリューンが涙を貯めた目で敬礼する。
「この度は、小官の至らなさ故、母君と御きょうだいをお守りすることが叶わず、誠に申し訳ございませんでした。亡きキルヒアイス元帥の麾下として心よりお詫び申し上げます。この上は、先帝陛下のご意思に背いた逆賊ヒルデガルド皇太后を討ち、アレク帝にご退位頂いた後、速やかにマクシミリアン・ジークフリード陛下にご即位頂く所存でございます」
ベルゲングリューンの決定的な言葉に、その場に居た将兵達の士気が一気に上がる。
しかし、当の少年は、大人達よりも冷静だった。
「それは少し待ってください。こうして駆け付けて下さったことだけで、母も伯父も感謝していることでしょう。僕は、できればもうこのような平和な世で、半分とはいえ血の繋がった兄と殺し合いなどしたくありません。戦闘に入れば、またたくさんの命が亡くなり、その家族の悲しみは、何倍にもなります。どうか、最後まで平和的な解決方法を捨てないで下さい。僕のような思いをする子は、もうこれで終わりにして欲しいんです」
この1年で両親ときょうだい全員を亡くしたはずの少年は、怒りに我を忘れていなかった。
そこに、その場にいた全員が、目の前の少年の中に統治者としての資質を見ていた。

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葵猫 (07/30 20:38) 編集・削除

いや、もうなんと言うか…手足切り落とさないだけ西太后よりましってレベルなヒルダたん…
私ヒルダを腹黒いとか、あまり考えない派ですが、あまり同情出来ないなぁ…あ、ラインハルトが無神経KYで諸悪の根元なのは勿論ですが。
子供を(胎児含)殺した時点で今まで積み上げたもの全部御破算にしちゃってますからね。
ラインハルトがああいう男で、それでも好きなら、やはり他に取るべき道はあったと思うので。
いい顔をしすぎたあげく、切れちゃったわけで。
そうかなと思ってましたが、やはりお子様一人生き残ってましたね。
マクシミリアン・ジークフリード君。
ラインハルトの頭脳とキルヒアイスの人間性、で美少年なら無敵!
に、引き換え皇太子様…
リセット後のヒルダがいちばんに直面する問題は、成長後の我が子の器量を見ちゃった事かもしれませんね。

葉子 (07/30 21:02) 編集・削除

>>自分はあの女には生涯膝を屈したくない。
>>自分だけでなく、自分の女も子供達もあの女の息子に膝を折らせたくない。
オスカー(><)!それでこそ男だ!!大好きだー!!!そして次男坊はどの時代もやんちゃ坊主w
でも『不逞な陰謀家の末裔』であるところの嫁の動向が気になります。ヒルダの子じゃないけどマクシミリアンもラインハルトの息子だから、エルフリーデ的には膝を屈するのは嫌じゃろうし、もう二波乱くらいありそう。

いっそ銀河第三王朝=ロイエンタール朝銀河帝国とかでもワタシは「いっこう構わん」www

しかし、エピソード確認しつつ原作読み直してるんですけど、ミッタ……。今までソーヘキ派だったけど、ロイエルに開眼したら、なんか色々違うものが見えるといいますか(爆)。

※サイト開設時(3年前)ころの投稿を遡って読んでいたのですが、Jeriさんのヒルダ論のぶれなさっぷりに吃驚。

Jeri (07/30 22:33) 編集・削除

>葵猫さん
両目くり抜いて人豚にしなかっただけ呂后よりもマシとも言ってあげて下さいwww

>いい顔をしすぎたあげく、切れちゃったわけで。

ヒルダもラインハルトもお互いを過大評価し過ぎていたという解釈を読み取って頂ければと思います。
ヒルダも生身の女だし、ラインハルトも生身の男なんだということを互いにもっと理解すべきだったというのが私の持論です。
まあ、あるいみキル子の存在がない原作では、いい意味であの二人は「似た者夫婦」なのかもしれませんね。

でもやっぱりこの話、一番の悪人は無自覚のラインハルトですよ。
中学生の時に、最初に源氏物語を読んだ時から感じていたんですよね。
六条御息所など、とにかく「嫉妬する女はダメ」と決めつける価値観に子供ながら怒りと疑問ばかり覚えた記憶があります。
後になって大和和紀の「あさきゆめみし」を読んでも、最後まで紫の上の本当の苦悩の原因がわからない光源氏に腹立ちましたw
だから、ラインハルトがこれくらい無神経でKYだったとしても、私には納得出来ちゃうんですよ。

>葉子さん
ご期待を違えないよう、エルちゃんには最後の最期に大活躍して頂きます。
尚、ごちゃごちゃの血族結婚が常識の貴族社会で生まれたエルちゃんは、実は、地位と名誉さえ約束されれば、仇の子との縁組も全然OK。それが貴族ってもんです。
自分は残念ながら武力で戦えないので、婚姻を結ぶことによって、家を乗っ取るという発想は、まさに『不逞な陰謀家の末裔』です。

>ヒルダ論のぶれなさ
ぶれないのがオバさんの特権!
あと7、8歳若いとどうしても他人の意見や作品に影響されて、途中で書けなくなっちゃう。
私も若い頃はそうでした。(遠い目)
健×小次か、小次×健かで悩んで書けなくなったり、若さ故の過ちも多々ございました。

追記)
>葉子さん
よろしかたら、次男君の名付け親になって下さい。
フェリックスだけは原作設定があるので助かってますが流石に男4人、しかもあの二人の息子に相応しいとなるともう考えるのが面倒でwww

葉子 (07/31 00:04) 編集・削除

>>次男君の名付け親
身に余る光栄です(><)がんばりまーす。
ちなみにワタシが一番好きな男性名はフェリックスだったりしますwww

健×小次とか、懐かしい~!小次郎大好きでした、ワタシ。あと富良野のカレとかv反町君とかv

Trindskallarna (07/31 00:50) 編集・削除

はじめまして。Trindskallarnaと申します。
Jeri様の御作品については、ロイエルのハーレクインを
はじめとして御拝読させて頂いております。
その中でも、今回の「寂寞の皇后」はJeri様の最高傑作たりうると愚考する次第です。
ヒルダの女性の情念をこれほどうまく描いた作品は
これまでに見たことがありません。
銀英伝の憑依系二次創作の嚆矢となった「銀凡伝」でもその情念は一部現れていましたが、
それはアレクの母親としての情愛に起因するものだったと記憶しております。
まさに、キャゼルヌの発言に見られるとおり、「炎は燃え上がるもの」だと感じました。
燃え上がった炎がキル子をはじめとしてどれだけの人間を焼き殺し、最後はどのようにヒルダ自身を紅蓮の
中に包むのか、一読者としてwktkを禁じえません。
今後の展開を楽しみにさせていただきます。
ちなみに、この御作品について家内に読ませようと
したところ、「えぐいのはヤだ」とか言われました。
…すいません、当方当年とって36歳のおっさんですw
…まぁ、男でもこの種の物語を好む輩がおるということで、ご参考頂けたら幸いです(^^;

皆様のご感想の中で、エホナラ族の慈禧タンや呂さんちの
雉オネータマの逸話が出てましたが、武さんちの則天タンのことも思い出してあげて下さいw
両手両足ぶち切って酒を満たした壺の中に入れるのは
西太后のエピソードでもありましたが、オリジナルは
則天武后だったと記憶しております。
むしろ私が考えたのは、皇太后陛下が第二帝妃を自分の手のものに●×▼させて、それを不貞の証拠として
帝国全土に無修正で公表するとか…
…ごめんなさい、おっさんの発想です。
お気に障ったら、すぐに削除しますのでお伝え下さい。

とまれ、素晴らしい作品を見せて頂いたことに
心より感謝の意を表させて頂きます。
最近あほみたいに暑いので、お体に気をつけて
執筆活動をお続け下さい。

エルダ (07/31 01:19) 編集・削除

うわぁ、どんどんすさまじいことになってますね。
諸悪の根源のラインハルトを矯正しようにも、矯正係も愛想を尽かしそうな。

ヒルダが第二のルドルフになるのもアレだけど、バカ(=ラインハルト)の結果(=マクシミリアン皇子)が皇帝となって、七元帥はじめ軍首脳部が功臣面する帝国が続くのも釈然としませんね(苦笑)

もうフェリックスがコールラウシュ朝銀河帝国を建てることを期待するしかありません。

べる (07/31 06:28) 編集・削除

いろいろとエンジンかかって参りましたw
ヒルダたんのエカテリーナ2世ぶりをどう阻止するのか…。
しっかしそこまで年を取って生き延びたロイロイって、中々想像がつきませんなw
眉間に皺が寄っていいてリヒテンラーデ侯爵に似ていたりしてw

非公開 (07/31 16:35) 編集・削除

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葉子 (07/31 19:03) 編集・削除

そういえば、ここに出てきた三人の少年・アレクサンデル(Alex)、フェリックス(Felix)、マクシミリアン(Max)って見事に韻を踏んでいる…。

※三人とも現代ドイツで人気の名前だそうです(人気ランキングの常連)wしかし「人名辞典から拾ってきた」と田中先生はおっしゃっていましたが、そのチョイスと組み合わせ方はやはり神がかっている…!と痛感いたしました。

ごん (07/31 19:13) 編集・削除

なんかあらすじじゃなくて小説になってる……というのは別として、ついに反乱起きましたか。
軍縮の成果か、小ぶりな艦隊編成ですね。私だったら隻数考えられませんけど。

なんかヒルダ倒せてもその暁には責任感じて割腹しそうな勢いのベルゲン……。ロイ、しばっとけ。

マクシミリアン・ジークフリード、マクシミリアンは何かと思ったら、止血帝由来ですね。
皇子全員ジークフリードが付いてたりしてw

>家柄も富も仕事も手に入れた女性が愛だけは唯一得られなかった
それだけ何でもあるなら愛ぐらい譲ってもええやーんと思う私は変でしょうか。愛がないって言ったって、幼年期のロイみたいな境遇でもなかったんだしー(爆)
マリンドルフパパはどうなってるんだろう。

横レス失礼します。
>べるさん
>しっかしそこまで年を取って生き延びたロイロイって、中々想像がつきませんな
きっと渋い40代になってると思いますよv
私が同人で知ってる中できちんと描写のある中で最長老なロイは70くらいでした。
たいていは50くらいで早死にさせてますけど。

Jeri (07/31 21:22) 編集・削除

>葉子さん
松×小次もOKで、反町×小次も好きでした。
でも、考えてみれば、C翼の反町一樹って、フルネームがあるだけ小野田よりマシなくらいで、原作では殆ど性格もバックグランドも不明、ついでに台詞も「はい」「それっ!」とか「キャプテン!」くらいなんですよね。それでいて、同人ではなぜかほぼ攻めキャラであり、都会的な少年(シティーボーイって言葉は古いのか?ww)というのがデフォで、尚且つ反町本とか普通に発行されてるくらい人気ありました。銀英のファーレンハイトの貧乏設定同様、原作者の高橋陽一先生も知らないところで一人歩きしてたキャラでしたね。
あ、次男君の名前ありがとうございます。
でもこれって、ラインハルトが嫌いな名前のベスト2のうちの1つなんじゃ?
あ、でも綴ってみて夫(内縁だけど)の愛に気付くってのもいいかも。
実際には僚友の名前ということで「ウォルフガング」がリアルなのかもですが、なんかちょっとロイエンタールの姓に合わない感じがしますしね。
>現代ドイツで人気の名前
結構ベタな名前が今でも人気なんですね。
「ラインハルト」や「ジークフリード」は古臭すぎるし、「オスカー」はよくペットの名前で聞きますw

>Trindskallarna様
はじめまして。
いや、まさかこれを男性が読むとは思ってもいませんでした。びっくりです。
最高傑作になるかどうかはわかりませんが、ラストまで全て話の筋があるので、最後まで書くだけです。
ちなみに、手足切水瓶漬けも、人豚も医学的に不可能だときいたことがあります。
中国の記述は往々にして大袈裟なものが多く、女性の残酷描写の原点は司馬遷の史記の中の妲己などの記述が元になっていると昔から言われています。
それを後代の歴史書の中で、同じような評価の人物の所業として、多少アレンジして流用して書いているという説は昔から有力です。
史記は優れた歴史書ですが、作者の司馬遷は前漢の武帝時代の人ですから春秋時代や戦国時代を実際に見て書いたわけではありません。昔からの伝聞を初めて書物の形にした功績は偉大ですが、やはり儒教道徳の元に書かれているものなので、夫の他の妻に嫉妬する正妻などの描写は殊更大袈裟に残酷に書いているふしがあります。
従って、呂后も則天武后も西太后も残酷描写の大元の出典は史記のいいかげんな記述なので、あれを本当のことにされている中国三大悪女の方々は、ちょっと気の毒です。

>エルダさん
歴史は繰り返すと言いますが、今度ばかりはイイオヤジになった七元帥も全員生き残ることはありません。
ただ、最期にリセット前に戻るという選択肢が残っているので、さて、どうなるかです。

>べるさん
オヤジ好きの私としては、ロイは50代になっても60代になってもいいオヤジ臭のするフェロモンオヤジってことになってて欲しいですw
ちなみに、この作品時のロイは49歳という、現在日本感覚ではまだまだ若いお年頃です。

>ごんさん
>なんかあらすじじゃなくて小説になってる
私も2回目くらいから気付いてましたw
でも、もうこのままで続けます。
>それだけ何でもあるなら愛ぐらい譲ってもええやー
私もそう思います。
ダイアナ妃が離婚してアルファイドと付き合いだした時、いくらなんでも未来の英国王の母が、イスラム教徒の恋人はまずいだろーと思いまして(欧米人は日本人の日蓮宗と真言宗とかの違いとは比べ物にならないくらいカトリックかプロテスタントかを重視しますし、イギリスは英国国教会なので、イギリス人以外が英国王室に嫁にいくなら多分改宗。同じキリスト教でもこうなので、長年の宿敵イスラム教徒なんて言語道断)、あれだけ金も地位あってもかわいい息子もいるなら、旦那にばーさんの愛人の一人や二人いても許してやれよとか思ってました。
あまりに多くを望みすぎるのは、身の破滅だという教訓ですね。
ヒルダたんも、美貌と才能に恵まれ、GB王朝の貴族の中では珍しく何も失わず、どんな形であれ好きなラインハルトと結婚できて、アレクもいるんだから、愛くらいなくても我慢してやれと言いたかったです。

非公開 (07/31 23:49) 編集・削除

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リセット-寂寞の皇后-(5)

ラインハルト大帝の崩御に伴う国葬及び遺言の実行は、彼の死後1ヶ月間の間に滞りなく執行されていった。
皇太子アレクサンデル・ジークフリードの即位式は、喪が明ける1年後に執り行われることとなった。
新皇帝となったアレクと摂政皇太后ヒルダは、ラインハルトがキル子と暮らしていた本宮殿に移り、キル子と子供達は、アンネローゼと共に昨年西側に建設された新たな小宮殿に引っ越した。
ラインハルトは、前の世界と違い、何年も前から不治の病であることを自身で知っていた為に、近しい人々に対してや、職務上必要な遺言書が毎年更新され、それぞれに宛てて音声データと文書で遺されていた。
ヒルダに対しては、良い夫でなかったことを詫びる言葉と、皇帝として皇后であるあなたの識見と統治能力を誰よりも信頼しているというものだった。
そして、公人としては、自分の死後の内閣と軍首脳の人事を摂政となるヒルダの名前で任命する具体的な指示がなされ、私人としては、皇太子を含めた全ての自分の子供達と、姉と第二帝妃のことをくれぐれも頼むということが記録されていた。
相変わらず何もわかっていない夫に腹が立ったが、それでもこの男を今でも愛している自分がせつなかった。
閣僚や軍首脳に対しては、葬儀は簡素に行い、火葬にするよう指示し、埋葬場所はオーディンのキルヒアイスの眠る墓の向かいの丘に墓碑を建て、将来、第二帝妃を合葬する為のスペースを作っておくことを命じた。
キル子とは、生前から偕老同穴を誓っていたので、これは彼女も承知のことだった。
尚、自分は小さな墓で簡素な葬儀で構わないが、自分の死後、恐らく長きに渡って帝国の統治に尽力し、自分以上に国家に貢献するでだろう皇后ヒルダに関しては、この前例に倣う必要はないともされていた。
即ち、初代皇后であり摂政皇太后となるヒルダの葬儀と御陵は、自分を凌ぐものであってよいというものだった。
愛してやれなかった女へのラインハルトのせめてもの贖罪だったのだろうが、そんなことが如何程の慰めになろうかと思うと、ヒルダは、もう何も言うつもりはなかった。
ラインハルトの国葬が終了し、15歳のアレクが無事二代目皇帝に即位すると、ヒルダは息子が成人に達するまでの5年間、摂政皇太后として、帝国の絶対権を握ることとなった。
ヒルダの智謀は、ラインハルトの死で動揺している帝国内で、自分の計画を即座に実行に移すのは得策ではないと判断していた。
まずは、先帝の遺言を忠実に実行し、当たり障りのないことから徐々に進めていくことにした。
軍に於いては、ロイエンタール、ミッターマイヤーの両元帥に大元帥の称号を与え、皇帝が成人し、自ら軍を統率できる年齢に達するまで帝国軍の最高指導者の地位を与えた。
40代後半の脂の乗った年齢にある二人に対する人事としては、妥当なものであると言えた。
次に、ミュラー、ケスラー、メックリンガー、ビッテンフェルト、ファーレンハイト、ルッツ、ワーレンに元帥号を授与し、彼等が軍の要職を占めた。
内閣の人事に関しては、15年もの間、殆ど不動であったことで、改革が円滑に進んだ一方、長く同じ人間が同じ場所で権力の座にあることを懸念する声を受けて、大幅な刷新を行なった。これもラインハルトの生前の意思である。
まず、ヒルダは政治家としてはあくまでも穏健派である父のマリーンドルフ伯に国務尚書を辞するよう促し、政界からの引退を勧めた。
これは、伯爵自身も、外戚である自分がこれ以上要職にあるのは良いことではないと常々考えていたので、あっさりと話が決まった。
閣僚の筆頭である国務尚書の後任には、伯爵は工部尚書のシルヴァーベルヒを推薦したが、ヒルダは、当時一昨年病を得て職を辞した司法省書ブルックドルフに代わってその地位にあった男を就任させた。
この男は、マリーンドルフ家と縁戚ではなかったが、フェイザーン出身の野心家で、以前から自分の立身出世の為なら何でもやる男として認識しており、今のヒルダとしては使える人間だった。
他にも、リヒター、ブラッケ、オスマイヤーなど新帝国の創世記を支えた尚書達を、多額の慰労金と年金を下賜する形で体良く追い払い、ヒルダは自分に忠実に動く者を登用していった。
彼女の巧妙さは、ラインハルト時代から一門であるマリーンドルフ家の者を要職に就ける傾向があったものの、決して尚書や軍首脳などの目立つ地位に置かなかった点である。
この時点では、実際に各省庁の実務を担う高官の4割以上が、何らかの形で皇太后と縁戚関係にあったが、それを指摘する人間は誰もいなかった。
ヒルダもラインハルトも、いくらマリーンドルフ家の血縁でも、全く使い物にならない無能な者は引き立てなかったのが、この勢力図に気付く者が皆無に近かった原因である。
但し、それに気付いている男が二人だけいた。
ひとりは、工部尚書のシルヴァーベルヒ、そして、大元帥という名誉称号を与えられ、統帥本部総長の実権を失ったロイエンタールである。
ヒルダの目的は、いずれ自分に忠実でないシルヴァーベルヒやロイエンタールを失脚させ、キル子とその子供達を獅子の泉宮殿から追い出すことだった。
それをこの5年のうちに、綿密な計画の下、少しづつ着実に実行するつもりだったのだが、思わぬ誤算が生じた。
ラインハルトの国葬が終わり、新人事も一段落した新帝国歴18年の9月中旬、第二帝妃のキル子が、実はまたしてもラインハルトの子を懐妊していることを告げたのである。
ヒルダは、目の前が真っ暗になった。
今ならば、かつては愚かだと思っていたベーネミュンデ夫人の気持ちが痛いほど判る。
そして、今度こそキル子に対する憎しみが確定的になった。
ラインハルトは、容態が急変し、崩御が時間の問題となりつつあった6月下旬のある夜、久しぶりに熱が下がり、小康状態となった時に、キル子の寝室に一人でやってきたという。
「いけません。お身体に障ります。どうか、御身を大切になさって下さい」
と言って、初めて彼の求めを拒んだキル子に対して、ラインハルトは、俺はどうせもう長くはないのだから、せめて最後にもう一度お前を抱いてから死にたいと言った。
熱い眼差しで哀願する男を、キル子はそれ以上拒めなかった。
火照った身体を重ねられ、時間をかけた愛撫は、すぐにキル子を快楽の絶頂に導いた。
ラインハルトは、自分の最後の命をキル子の中に注ぎ込んだのだった。
何度も耳元で愛を囁き合いながら、ラインハルトはキル子の中で果てた後も、身体を繋げたまま朝を迎えた。懐妊したのは、この時以外考えられない。
この時期は、皇帝は侍医団から激しい運動も性生活も禁じられていたので、このことを知っているのは、当事者以外では、キル子の傍近く仕えていた女官長であるルッツ夫人クララのみである。
「この子は、陛下が私に残して下さった最後の形見です。この子を陛下の分身と思って、他の子達同様、大切に育てていきたいと存じます」
ヒルダが、自分の存在を容認してくれている人格者であると信じているキル子は、愛おしそうにまだ膨らんでいない腹部を撫でながら言った。
ヒルダが、氷の眼差しでそれを凝視していることに気づきもせずに。

翌日、キル子は、突然部屋に踏み込んで来た皇宮警察によって身柄を拘束され、要人用の監獄に収監された。
罪状は姦通罪。先帝の妃の立場にありながら、病篤い先帝を裏切り、他の男と密通して妊娠までしたということであった。しかもあろうことか、その子を先帝の子として育てようとしているなど、反逆罪に等しいと担当検察官は、厳しく糾弾した。
この検察官がマリーンドルフ一族の端に連なる者であることはあまり知られていなかったが、ヒルダが以前から密かに目をかけていて、このような日の為に飼っておいた男の一人だった。
「そんなことは絶対にありません。誤解です。この子は確かにラインハルト陛下のお子です。私が陛下以外の方に身を許すことなど有り得ません。どうか、皇太后様に会わせて下さい」
必死に潔白を訴えるキル子だが、取り調べ官達は皆薄笑いを浮かべ、誰一人としてまともに取り合わなかった。
それでもキル子は、まさかこの件の首謀者がヒルダだとは夢にも思わず、最後まで何かの間違いだと思っていた。
しかし、皇太后の前に引き出されたキル子は、ヒルダの口から、姦通罪により皇族の身分の剥奪と、獅子の泉宮からの追放、更にお腹の子の堕胎を言い渡される。
更に他の子供達の親権を剥奪され、彼等の皇位継承の可能性を事実上奪った。これにより、ヒルダは唯一の息子である新帝アレクの立場を守ったのだ。
事情を知る女官長のクララは、姦通など有り得ない、ルッツ元帥夫人でもある自分が証人だと言い、公正な機関でのお腹の子のDNA鑑定を求めたが、今やあらゆる業界にマリーンドルフ閥の存在する帝国内で、それが無意味であることを即座に悟った。
ヒルダは、女官長のクララの責任も追求し、彼女を罷免した後、夫であるルッツの元帥号を剥奪し、退役に追い込んだ。
他の軍首脳夫人と違い、フェザーン人でもあり、看護師として10年の社会経験を持つクララは、この事態の把握も早かった。
キル子の女官長として長年ラインハルトと二人の愛の生活を間近で見てきた彼女は、いつかヒルダがこのままでは済まないのではないかという不安をずっと抱えてきたのだった。
クララは退役した夫と共にフェザーン郊外に隠棲を余儀なくされたが、このような理不尽をこのまま放置するつもりは更々なかった。
「皇太后様は、今や神聖不可侵の絶対者であられます。下手なことをするのは、御身の為にもなりませんぞ」
釘を刺しに来たヒルダの腰巾着の事務官に向かって、クララの対応は思いがけない程厳しいものだった。
「いったいいつからローエングラム王朝は、ゴールデンバウム王朝の恐怖政治を模倣するようになったのですか? 私も夫も罪のない女性を無理矢理陥れるような方に忠誠を誓ったつもりはございませんわ」
「そうだ。これ以上妻と大公女様を侮辱することは許さない。たとえ相手が皇太后陛下であってもだ」
そう言って、ルッツは、おもむろに銃を取り出した。
「かつては射撃の腕前では、帝国軍一二と言われたものだがな。最近歳のせいか、時々手元が狂う」
それを聴いた事務官は震え上がって退散した。
脅しをかけたつもりが、逆に夫妻の毅然とした態度に気圧された事務官は、所詮看護師上がりの女と戦争しか脳のない軍人と侮っていたことを後悔する羽目になった。
しかし、ヒルダのキル子に対する憎しみは収まることはなく、その後も相次いで粛清が続いた。
キル子は、ラインハルトが最後に残してくれた胎児を、子宮ごと摘出するという残忍な方法で無理矢理堕胎させられると、まだ身体が回復しない内に、自慢の艷やかな赤毛をバッサリと切られ、囚人服を着せられて、フェザーン星内の辺境収容所に収監された。
キル子の逮捕時から、ずっとヒルダに面会を求め、彼女とお腹の子の助命を嘆願していたアンネローゼも、今やヒルダにとって煙たい存在となっていた。
考えて見れば、この女性は、常にラインハルトにとって自分の上に位置していた。
そして、自分よりもキルヒアイスの義妹であるキル子の方により親近感をよせており、この時のヒルダにとっては、最早敵と言っていい存在であった。
それでも、ラインハルトの肉親であるアンネローゼに危害を加えることは、流石にヒルダにも躊躇われ、元々オーディンのフロイデンの山荘で隠棲生活を送っていた彼女に、皇帝が亡くなった以上、元の生活に戻ってはどうかと提案し、暗にオーディンへ追い払おうとした。
しかし、アンネローゼもこの時は、以前のアンネローゼではなかった。
これからの帝国の行く末を見届けなければ、隠棲などしていられないという義姉に、ヒルダは、それなら一緒に皇宮に住み、忙しい自分に代わって、アレク皇帝の養育に当たって欲しいと願った。
先帝の姉として、また、ラインハルトの覇業の切っ掛けを創った女性として、帝国内でのアンネローゼのカリスマ性は、ある意味血縁的には他人である自分よりも強かった。
そのアンネローゼが、新皇帝アレクを育てたという実績を内外に知らしめるのは、アレクの皇帝としての権威付にも役立つ。
また、ヒルダのもう一つの誤算が、他ならぬこのアレクだった。
外見は、ラインハルトと自分の容貌を受け継いだ美少年だったが、才智は凡庸な部類で、学友に選ばれた少年たちとの差の歴然だった。万事において無気力で飽きっぽく、性格や気質は、両親のどちらにも似ていなかったが、ヒルダは、会ったことはないが、話に聞くラインハルトとアンネローゼの父親であるセバスチェンを連想していた。
しかし、ヒルダには、この夫と自分を繋ぐ唯一の不肖の息子が可愛くてならなかった。
ラインハルトは、もし、アレクに統治者としての才がなければ、あえてローエングラム王朝を存続させることはないと言い遺していたが、ヒルダには、この子を次期皇帝として、ローエングラム王朝が未来永劫続くことしか眼中になかった。
女としての愛を遂に得ることができなかったヒルダにとって、息子であるアレクが亡きラインハルトの跡を継いでいく以外、彼と自分の絆を確認できるものが他になかったのだった。
有能な助言者や補佐官、共に新たな帝国の創設者という人間なら、オーベルシュタインや双璧と何ら変わらない。
ヒルデガルドという一人の女性に対してのラインハルトへの思いが確認できるものは、たった一度の逢瀬で懐妊した息子ただ一人だけだった。
だが、それさえも、愛は否定された。
ラインハルトが真に愛した女性は、自分ではなく、亡き親友の面影を持つ、ただひたすら美しく優しい少女だった。
ヒルダのような智謀もなければ政治センスに優れているわけでもない。
でも、彼女の存在のみが、唯一、ラインハルトを皇帝ではなく一人の男に戻し、彼に人間としての幸せを感じさせることができたのだ。
それは、一箇艦隊に匹敵する智謀の持ち主と称された自分が、どれ程努力しても遂に為し得なかったことである。
その底なしの悲しみが、ヒルダの心を壊した。
ヒルダの次のターゲットは、そのアレクの存在を脅かす、キル子の産んだ異母弟妹達であった。
当時まだ幼かった子供達は、母親であるキル子の追放後、アンネローゼやヴェツトパーレ男爵夫人、シャフハウゼン子爵夫妻に引き取られて養育されていた。
一番年上の第一皇女クラリベルが13歳であるのを頭に、まだ殆どの子供達が10歳に満たない年齢で、流石に彼等に何かの罪を着せることは不可能だった。
ヒルダは、密かにラインハルト時代に粛清されたラングの残党達を集めて、かつての「内国安全保証局」を「治安監視委員会」と名を変えて、皇太后直属の諮問機関として復活させていた。
委員長に就任したのは、ヒルダの母方の親族で、メンバーの殆どがマリーンドルフ一族で固められている。
ヒルダは、軍や警察とは別に、彼等直属の陸戦部隊や捜査機関を与えて権限を強化し、彼等に命じて、密かにキル子の子供達を次々と病死や事故に見せかけて殺していった。
ラインハルトとの子を無理矢理堕胎させられ、劣悪な環境の収容所で見る影もない程窶れてしまったキル子は、子供達の死亡の知らせを聞くと絶望し、「誰もお恨みしてはおりません。先帝陛下の元へ参ります」と走り書きを残して、房内で自害した。
新帝国歴19年4月、ラインハルトの死から、1年も経っていない春の日の出来事だった。

コメント一覧

葉子 (07/29 19:14) 編集・削除

ラインハルトぇ…(以下略)。

今回分はこの私(汗)でも直視が若干つらいので、半分横目で読みました。女の敵は女と昔から言いますが、怖いです…(韓流歴史愛憎劇ってこんな感じなのですか?)。壊れていく母君の心中を察すれば、息子・アレクサンデル(15歳)もただ見詰めるしかないのか…。

でもここまできたら、毒食らわば皿まで、で『VSロイエンタール家』との闘争を待ちたいと思います。

Jeri (07/29 20:49) 編集・削除

>葉子さん
さあ、VSロイエンタール家というより、ヒルダ&マリーンドルフ閥&振興若手提督(上が詰まっていて今まであれ以上の出世が望めず内心で不満を募らせていらグリ&クナ&トゥル達がやっと大軍を指揮できるようになった)VS地位だけ上げで実権を奪われた双璧&ミュラー等旧ラインハルト幕僚達という図式で対戦します。そこに同盟や文官達も絡んできたりして、本当に滅茶苦茶になってしまいます。
でもこれ、いったい誰が一番悪いの?
と考えた時、私はやっぱり、「あの時」にヒルダの「数の論理」でヴェスターラント男の暴言に慰められてしまったラインハルトだと思うのですよ。
はっきり言って、統治者としての覚悟が足りません。
ヒルダの方が気の毒。確かにラインハルトに惚れていたからこそ、あの時必死で言葉を見つけて慰めたんだろうけど、ラインハルトさえしっかりしていれば、あんな形でHすることもなかっただろうし、ラインハルトとずっと皇帝と秘書の関係でいれば、そのうち最愛の人を見つけたラインハルトを諦めて、自分はマリーンドルフ家の次期女当主として適当に有能な男を婿に迎えて、それなりの幸せを掴んだと思う。もちろん、そうすれば、嫉妬に狂って人格変わることもなかった。
全ては、政治戦略のセンスはあっても人間の心の襞が理解できなかったお子ちゃまラインハルトが悪い。

葉子 (07/29 22:59) 編集・削除

>>お子ちゃまラインハルトが悪い。
原作でもキルヒアイスに「おまえは一体おれの何だ?」、ロイエンタールに「かかってこいや」ですからね。一体何人傷つけたんだろう、あの男。
>>「あの時」
ヒルダ腹黒論者のワタシ的には、(ごにょごにょ)…思うところはありますが、ヒルダ本人も原作で「義務感で求婚している」って言っているので、分かってはいたんでしょうね…(そういえば原作に「愛している」って言っているところあったかしら?)。

ごん (07/30 00:09) 編集・削除

4とまとめて感想です。

ライ&ロイ、子供作りすぎでしょう(爆)特にライ。
ロイと同じ数だけとおもって読み返したら、7人(いや殺された胎児含めれば8人?て(爆))て(爆)
「王族の役目は繁殖」というマルクスだかの言葉がありますが、体労われや。

「****できれいになる」って私も頭に浮かびましたけど、実際はあまり体に良くないという説も聞いたことがあります(笑)。

冗談はさておきや、5話は……辛いですね、この展開。

この話のヒルダ、自分の役目は国を動かすこと、ラインハルトの共同経営者、と割り切って仕事に生きるか、しゃにむにカイザーに求愛するか、どっちかならまだ良かったと思うんですけどねー。(後者をとった場合、ラインハルトの寿命が縮む可能性がありますが(爆))
そうも行かないのが人生なんでしょうね。

>「最近歳のせいか、時々手元が狂う」
ルッツの目が真っ赤に燃えている。怒りに我を忘れているんだ。(←失礼)
てか、政治に首突っ込みたくない男ミッタもこれではどうなるやら。

皇子は他の人に立てられてしまう危惧がありますが、皇女は政略結婚にも利用できるし、全部殺されるたぁ思わなかったです。というか、皇女方、ロイの息子達(一人余るけど)に食われるかと予想してたんですが……(泣笑)

べる (07/30 11:48) 編集・削除

子殺し、
これはロイだのベルヒだのに
感づかれるよね…。
それにこれじゃミタマイヤも着いていかない悪寒。
ああヒルダたん…(涙)

ゆうやん (07/30 16:55) 編集・削除

想像以上の暴れっぷりにさすがに驚いたり・・・。

しかしやったことは最悪の選択ですがこれまでを振り返るとなんというか、責めきれないというか・・・。
ヒルダの方も「いつか気づいてくれる。気づいてほしい」というスタンスからごんさんの言われたように行動できればまた違ったんでしょうけど・・・。

単純にパラレルでの双璧争覇はヒルダ派のみっちゃんとか思ってましたけど、この展開じゃさすがに無理ですね。
さて次回牙がどう向けられるのかしら?

Jeri (07/30 21:20) 編集・削除

(注)「キル子」という名前に抵抗のある方、どうか脳内変換、又はコピペして名前変換等ご自由にカスタマイズして下さい。
また、先程ヲタ友に指摘されて気付いたのですが、これはいわゆるラインハルト×女体化キルヒアイスの女体化BLものではないか?とも思えます。
私としては、このカップリングは、赤金なのでしが、金赤でもいいかなと最近思うようになりました。
尚、この作品がらいとすたっふルール2004に則っているかどうかは、自分でもよくわかりませんwww

>葉子さん
>原作に「愛している」って言っているところあったかしら?
ないです。(きっぱり)
「大切な人(役に立ってくれる女)」ってのはありますがw
まあ、こちらはよしりんが直接的表現を照れで書けなかったんだと解釈してます。
そう言えば、もう20年も前の話ですが、今の皇太子殿下と雅子妃の結婚が決まり、二人で記者会見をやった後、好意的にな記事一色だった日本のメディアに比して、ある外国(どこの国か忘れました)の高級紙が「彼女は、遂にただの一度も『皇太子を愛しているから結婚する』とは言わなかった」と書きました。
海外暮らしの長い私には、こちらの見解の方が自分の感覚に近かったのを覚えています。
「愛してる」と言わないのは、1700年後の世界でも皇室の伝統になっているのでしょうか?www

>ごんさん
>子作りしすぎるライとロイwww
だってライは皇帝だもん。避妊なしがデフォ。
ロイは今まで厳重に避妊してたのがエルとの一度の失敗で投げやりになって、もうどうでもよくなっちゃった。
ちなみにどうして男ばかり5人続いたかというと、産み分け処置をする前に、いつもロイの奇襲攻撃みたいな形で子供ができてしまうからです。エルちゃんとしては、フェリの次に女の子を一人産んで終わりにしたかったのが、予定が大幅に狂ってしまったという裏設定です。

>べるさん
そう。迷いますが、ミッちゃんもこれ以上、狂ってしまったヒルダたんに付いていけなくなってしまいます。
実はその背中を押すのがエヴァの役割だったりして…

>ゆうやんさん
美貌にも才智にも財力にも家柄にも恵まれた女が、たった一つ、愛だけを得られなかった悲劇…と感じて頂けたらと思ってます。

リセット-寂寞の皇后-(4)

新帝国歴5年8月、20歳になったキル子は、ラインハルトの第一皇女を出産する。
フェザーンの進んだ周産期医療のおかげで、早い段階で女児であることがわかってはいたものの、ラインハルトはまたしても名前を考えていなかった。
初めての娘の誕生に、戸惑いと喜びの表情でフワリと軽い赤子を抱く皇帝は、市井の若い父親と変わらなかった。
皇女は、アンネローゼによって、姉弟の母親の名前をとって「クラリベル」と名付けられる。
約一ヶ月前に誕生したエルフリーデが産んだロイエンタールの次男や、半年前に生まれたミッターマイヤー夫妻の初めての子である男女の双子とも同級生になるので、早くもご学友選びには不自由はしなさそうだとの声もあった。
キル子の女官長でもあるルッツ夫人クララも、来年早々に出産予定であり、フェザーンでの安定した生活の為か、ローエングラム王朝の高官達の家庭は、このところ出ベビーラッシュである。
皇后ヒルダからも祝いの品が届き、皇太子アレクに妹が誕生したことを祝福する言葉が添えられていた。
ヒルダの本音を言えば、皇子ではなく皇女であったことで、少しばかり安心感もあった。
キル子の方は、ヒルダの気持ちを思えば、彼女の気遣いが有り難くもあり、また申し訳なくもあった。
ラインハルトは、自らの強い信条で、キル子の懐妊中も決してヒルダと寝室を共にしようとはしなかった。
キル子が、皇帝夫妻に夫婦生活がないことを知ったのは、第二帝妃となってラインハルトと生活を共にするようになってから間もなくのことだった。
いくら何でもそれはあまりだと思う一方で、かと言って自分の方から皇帝に対して、皇后の寝室を訪れるよう促すなどという出過ぎたことは言えなかった。
第一、そんなことをすれば、余計にあの比類なき才智と美貌の女性の誇りを傷付けることになる。
また、そうすることが二人の妻に対する誠意であると信じているラインハルトの考えを翻せるだけの説得材料も年若いキル子にはなかった。
初めて出会った当初から、キル子は漠然と、ラインハルトは、その無性的な容姿から、性的には淡白なタイプの男性だと感じていたし、ショートカットで男装していたヒルダも、そういう方面の欲求は少ない女性なのだと思っていた。
しかし、彼と夫婦となり、毎夜求められる度に、男性経験のなかったキル子にも、彼が決して淡白な男などではないことがわかってきた。
まだ少年の面影が残っていた無性的な雰囲気も、二十代後半に入る頃には流石に消え、古代の名工の彫像を思わせる男性的な肢体へと変貌を遂げていった。
それは、まるで太陽神そのものだった
男としての身体的変化に伴い、ラインハルトは次第に性にも貪欲になり、まるで星々の大海を征服するように、キル子の身体を思いのままにしていくのだった。
寵姫となったばかりの頃、キル子は初めて達してしまった時、思わず我を忘れて嬌声を上げてしまった。いくら妃とはいえ、皇帝陛下の前で非礼に当たると思ったキル子は、身を硬直させ、自分に覆い被さるラインハルトに泣いて詫びた。
しかし、その姿がかえってこの比類なき覇者の征服欲を掻き立てたらしく、ラインハルトに怒りの気配はなく、逆にキル子の涙を唇で吸い取りながら、更に強く彼女の中に身を沈めて、激しく彼女を攻め始めた。キル子は最早何も考えられなくなり、気がついた時には、果てる寸前の皇帝陛下に四肢を絡ませ、強くしがみついていたのだった。
「陛下…」
と呟くキル子に、ラインハルトは、
「ここには俺とお前しかいないのだから、そんな呼び方はよせ」
と言って、笑いながら頬をつついた。
以来、寝台の中では、自分が思うがままに振舞った方が陛下の御意に適うと知ったキル子は、二人きりの時はただの男と女として彼に接するようにすることにした。
ラインハルトの侍医団は、持病のある皇帝の毎日の健康チェックを欠かさなかったが、キル子と過ごした翌日は、不思議と数値が安定しているというデータがとれ、彼等の間でも第二帝妃キル子は、皇帝にとって不可欠な存在として認識されるようになっていた。
そして、すっかり女になったキル子は、なぜフロイライン・コールラウシュが、仇である男と暮らし、その子を産むことができたのか、理解できたのだった。
キル子の女としての目覚めは、次第にラインハルトに対する独占欲を生んでいくが、同時に、悦びを知れば知るほどヒルダが哀れだった。
『いっそ皇后様が、嫉妬深くて意地悪な女性ならよかったのに』
と、何度思ったか知れない。
それは、いみじくもヒルダの方も同じだった。
第二帝妃が、皇帝の寵愛をかさに着て、自分を蔑ろにするような女なら、いくらでも戦いようがあるのにと思わずにいられない。
しかし、考えてみれば、ラインハルト程の男が、そのような女を妻にするわけがない。
皇帝は、公の場では皇后たるヒルダを立て、ヒルダも皇帝である夫の政務を助け、夫の子を産んだ寵姫を労わる。寵姫は、決して出しゃばらず、あくまでも私生活で皇帝を支え、皇后を敬う。
この三者三様の役割分担で、ローエングラム王朝の皇室は、表面上は上手く機能していたのだった。
翌年、キル子は、第二皇子を出産し、ヒルダを動揺させる。
更にその翌年第二皇女を、また翌年には第三皇女を産む。
そして、その翌々年、皇帝在位10年の記念すべき年、しかも即位日と同じ6月22日、まるで即位10周年を祝うかのように第三皇子を出産した。
これで皇統は盤石だと国民は祝賀ムード一色で、ラインハルトの病を知る重臣達も、皇帝に万が一のことがあった時のことを思い安堵し、最初は寵姫の存在を快く思っていなかった者達までもがキル子を認めるようになっていった。
だからと言って、ただ一人の皇后の子であり、第一皇子である皇太子アレク大公の地位が脅かされるものではなかったが、ヒルダにしてみれば、やはり平静ではいられなかった。
この頃になると、皇室内だけでなく、廷臣達から国民に至るまで、皇帝を公に支え、次期皇帝である皇太子の養育に当たるのは皇后ヒルダであり、皇帝の私生活面でのパートナーとして、皇帝の子を産むのは第二帝妃のキル子の仕事であるという図式が、暗黙の了解として浸透していた。
建国の功臣達の中では、ミッターマイヤー夫妻は、最初に生まれた双子の兄妹以外に、その後子供は作らなかったが、エルフリーデは、何か思うところがあるのか、キル子に対抗するように、毎年のように出産を繰り返し、新帝国歴12年迄の間に、フェリックスを頭にロイエンタールの息子を5人も産んだ。
不思議なことに、彼女は出産による容色の衰えが全く見られず、それどころか、息子が増える度に艷やかさを増していくように見え、周囲を感嘆させていた。
いったいいくらロイエンタールの金を使って、フェザーンの最新美容を実行しているかと、上流階級から一般庶民に至るまでの帝国女性たちの関心の的だった。
キル子は、自身も平民の出であり、質素な皇帝のことも考え、美容に高額をかけるつもりはなかったが、それでも皇帝と肌を合わせる唯一の女の嗜みとして、毎月下賜される自分の化粧料の中から特に産後の体のケアを入念に行なった。
だが、どんな美容品よりも、彼女にとっては、ラインハルトに抱かれることこそが美しさを維持する一番の妙薬だった。
出産後にキル子の身体が回復し、医師団の許可が出ると、皇帝はその夜から彼女を求め、キル子も妃の務めとして、常にそれに応じてきた。
皇統を絶やさないことが使命である皇帝は、原則として避妊はしない。
故に、キル子は、生涯で三男四女、計7人ラインハルトの子を産むこととなる。
度重なる出産にも関わらず、毎夜繰り返される皇帝の熱い愛撫と情熱は、10年以上の時を経ても尚キル子の美しさと若々しさを損なわせることはなく、いつしか人々は、その髪の色から「ルーヴェンブルンの紅玉石」と彼女を讃えた。
一方、女でいる必要のなくなったヒルダは、キル子が妃となって以来ずっと短髪を維持し続け、最近では化粧をすることも稀になっていた。
生来の美しい顔立ちも、肌の乾燥と大量に服用している薬の副作用のせいか、年齢より老けて見える程台無しだった。
それでも、ラインハルトは彼なりにヒルダに対しては、負い目のようなものがあるのか、彼女への気遣いは忘れなかった。
父親のマリーンドルフ伯が、外戚という立場にありながらそのまま国務尚書の座に在るのもその現れであり、他にもマリーンドルフ家の一族の中で有能な者を積極的に各省の要職に就けて、皇帝がリップシュタット戦役時からの味方である皇后とその一族を信頼し、重用していることを内外に知らしめた。
だが、皮肉なことにこの人事が後に凄惨な宮廷闘争の火種となることをこの時のラインハルトには予測できなかった。
更に、ヒルダの誕生日は、「皇后誕生日」として皇帝誕生日と共に国民の祝日とし、フェザーンにいるほぼ全ての重臣達を宮殿に招いて、彼としては異例ともいうべき旧王朝にも劣らぬ盛大な祝賀パーティーを開いた。
この席には、キル子とその子供達はあえて出席させないのも慣例となっていた。
また、この日に限っては、毎年、質素を旨とするラインハルトらしからぬ贅を尽くした贈り物を皇帝から皇后へすることも、最早恒例だった。
但し、ヒルダ本人は、正直このようなラインハルトらしくないイベントで自分を慰めてもらっても、益々二人の間の距離感を覚え、一層寂しさを募らせるだけだった。
しかし、この贅を尽くした宮廷行事に、国民から重臣まで誰一人批判的な者はいなかった。どれほど豪勢な晩餐会を開こうが、高価な宝飾品を贈ろうが、一度の戦闘で何千隻もの戦艦が沈む戦争を考えれば、安いものである。
しかも、ローエングラム王朝では、こうしたパーティーは単なる支配層の贅沢に留まることなく民間業者も絡む為、広く国民に還元される。
10年の妥協的平和の中で、すっかり厭戦的になってしまった帝国、同盟の両国世論を配慮して、最早再戦を唱える者は軍部でも少数派となっていた。

新帝国歴16年3月、キル子は再び女児を出産する。ラインハルトにとっては、第四皇女であったが、皇位継承とは遠い立場の子ということもあり、キル子は、今までの子以上に自ら世話をして溺愛して育てた。
奇しくも同じ病院の同じ特別病棟で、一ヵ月後、エルフリーデが第六子となる彼女にとっては待望の女児を出産した。
なぜかフェザーン式の産み分けを行わず、男児ばかり5人出産した後の初めての娘だった。
エルフリーデには、この娘に託したい密かな夢…というか野望があった。
まだ実行に移すには時間が必要だが、両親の美貌を受け継いだこの娘ならば、必ずや叶えてくれるはずだと確信していた。
邸の中は、既に主の5人の息子とその世話係が起居しており、オーディン時代からの使用人達も、この正式な妻でない女性に、何の疑問もなく女主人として仕えている。
現在は、古株の執事が、初めて誕生したご令嬢の為に、乳母やベビーシッターの人選に余念がない状態である。
結局、漁色家などという異名を持つわりに、複数の女と並行して関係を持つことに嫌悪感を感じるという皇帝と同じ価値観の持ち主であるロイエンタールは、この十数年邸に居座った伯爵令嬢に完全に私邸を乗っ取られた形になってしまった。
但し、当人がそのことにさして不快感を抱いていない様子であることも事実だった。
そして、ヒルダのみが知る15年目に当たる新帝国歴18年1月、キル子は、自身とラインハルトの最後の子である第四皇子を出産する。
キル子は、一昨年生まれた皇女同様、皇位継承に関わる可能性の薄いこの子をできるだけ自分の手で育てることを願い出て許される。
皇宮には、不惑の年を迎え、政治感覚に優れた手腕を発揮する皇帝と、その姉の大公妃、第二帝妃とその7人の子供達、東宮殿には、聡明な補佐役である皇后と、間もなく15歳になろうとする皇太子がおり、ローエングラム皇室は、一見盤石であるかに見えた。
だが、タイムリミットは刻々と近づいていた。
ラインハルトは、春先に体調を崩したのをきっかけに、頻繁に微熱を繰り返すようになり、6月に入る頃には、更なる容態の悪化が告げられる。
7月には、遂にこれまでの延命治療が限界であることを主治医が皇后と大公妃、第二帝妃に告げ、今月を乗り切れるかどうかわからないと言ってから、只管3人の女性に対して平伏した。
崩御の日を唯一知るヒルダは、これが本当の夫との別れになる寂しさと、これでやっとこの15年の苦しみから開放される思いとが交錯していた。
そして、再び運命の7月26日がやってくる。
以前と違うのは、皇帝の病室が、仮皇宮ではなくルーヴェンブルン宮殿内の集中治療室であることと、寵姫や成長した子供達も最期を看取る為に集まっていること。
文武の重臣達の中に、以前の世界ではいないはずのロイエンタールやルッツが揃っていることだった。
長くフェザーン高等弁務官の地位にあったミュラーも、月始めに勅命で呼び出されている。
近くのホテルに、陸戦部隊に警護(監視)されたヤン・ウェンリーとその一党、亡命したメルカッツも滞在中である。
13時、一時的に心肺停止になり間もなく蘇生したラインハルトは、ヒルダに対して、以前の世界と同じように政治的な遺言を残す。死んでいるはずの人間がいたりするので、内容は若干異なるが、大筋では同じようなものだった。
ヒルダは更に、皇后としてでも、皇帝の補佐役としてでもなく、妻としての自分に対しての言葉を待ったが、とうとうそれが聴かれることはなかった。
それでもヒルダは、正妻の威厳を持ってキル子と二人で話すことを奨めると、ラインハルトは、心の底から感謝の視線で「頼む」とだけ言った。
打ちのめされながらも、ヒルダは皇后として、間もなく摂政皇太后となる身として、キル子に皇帝の枕辺に侍るよう促す。
自分は部屋を出る振りをして、壁越しに、つい二人の会話を聞いてしまうヒルダ。
そっと手を取り合うキル子とラインハルト。
「いつ死んでも悔いのない人生のつもりだった。だが、今は悔いている。お前を残して死ななければならないことにだ…」
「ご心配なさらずに。あと何年か待って下さい。子供達が一人立ちすれば、きっと私も召されるでしょう」
「ふっ…お前は、健康そのものではないか」
「でも、ラインハルト様のいらっしゃらない世界では、私はきっと長くは生きられません。役目が終わったら、すぐに御そばに参りますので、それまでどうか、兄のジークフリードと一緒に、ヴァルハラで待っていて下さいませ」
「わかった。二人でお前が子育てに奮闘しているのを上から見下ろして笑っているぞ」
「まあ!」
小さく笑い合う二人。
ラインハルトは、改めてキル子の手を強く握る。
「愛している」
「私もです。陛下…いえ、ラインハルト様」
「お前には、すまないことをしてしまった。こんな窮屈な場所に連れてきて、第二帝妃などという体のいい寵姫にしてしまった…」
「いいえ…いいえ…私は幸せでした。あなたと出会えて、あなたと愛し合えて、あなたの子を産んで、これ以上何を望みましょう」
「そう思ってくれるのか…」
「はい、はい…ラインハルト様。どうか、もし、また生まれ変わっても、私をあなたの御そばに置いて下さい」
最後の言葉は涙声になっているキル子だった。
「もし、今度生まれ変わったら、俺は皇帝でなくてもいいか? ただの平凡な男でも、また妻になってくれるか?」
「勿論ですわ。ラインハルト様。私は、あなたが皇帝でも共和主義者でも関係ありません。どんなあなたでも愛しています」
来世でも結ばれることを誓う二人の会話を壁越しに黙って聴いているヒルダは、最早流す涙さえなかった。
いや、心のなかの慟哭が激しすぎて、涙がでなかったのかもしれない。
『私は、いったい、あの方の何だったの…?』
この時、ヒルダの中で、今まで必死に支えていた何かが音を立てて崩れた。
23時29分、皇帝の死に水を取るヒルダ。
そっと耳を近づけ、それでも最後の望みを託す。
「宇宙を手に入れたら、みんなで…」
以前と同じ言葉が辛うじて聴き取れた。
しかし、リセット前の世界と違いほんの僅かだが、ラインハルトの口元がもう一度開いた。
再び耳を近づけるヒルダ。
「キル子…」
それが新銀河帝国初代皇帝ラインハルト1世の最期の言葉だった。
ヒルダは、絶望の淵から辛うじて身を起こし、自身を奮い立たせる。
そして、以前と同じ台詞で一同に向かった。
「カイザーは、命数を使い果たしてお亡くなりになったのです。病に倒れたのではありません。どうか皆さん、そのことを忘れないで下さい」
そう言って、深く礼をするヒルダだったが、その頬に伝うはずの涙はなかった。
『もう、我慢などするものですか! これで私が摂政皇太后。この新銀河帝国の絶対者になる。許さない。もう誰も許さないわ。子供を産むしか能がないくせに陛下の愛を奪った女も、いつも私のことを小馬鹿にしている元帥も。情けをかけて助けてやったのに、いつも私を見下した態度のその愛人女も。みんな…みんな滅ぼしてやる!なぜなら、私は、ゴールデンバウム王朝開闢以来の名門、マリーンドルフ家の娘。そう、あのルドルフ大帝の血を引く者なのだから…!』

コメント一覧

べる (07/28 07:31) 編集・削除

あーあ。
ヒルダたんが怒っちゃった……(涙)

葉子 (07/28 13:01) 編集・削除

ちょうど更新が明け方なので、こうなると朝の連続テレビ小説(しかも大河もどき)のようです。連日楽しませていただいております。
…ところで思ったのですが、銀英IFものでも、コレはやはり男性には受けない気がします。艦隊戦がないから、ではなくて、ここに出てくる女はみんな程度の差こそあれ醜いから。男性諸氏にロイエンタール並のトラウマを植えつけかねないwww
『格付けしあう女たち』、女の醜さを楽しめるのは同性ゆえの特権かもしれません。エルフリーデに至ってはここまで突き抜けていたら、いっそ清々しいです…。


>>息子が増える度に艷やかさを増していくように見え、周囲を感嘆させていた。
エルフリーデ・フォン・コールラウシュ(ロイエンタール元帥夫人)に聞く『****できれいになる銀河帝国』。美しすぎる母子達―オスカー・ファイブとご令嬢[帝国公用語で書いてある]―とかのキャプションで、肖像写真がばばーん!掲載紙を執務室でめくっては「おれってやっぱりいい男だなあ」と一人悦に入るロイエンタールとかいやだwww
>>エルフリーデの野望
ザ・政略結婚でローエングラム朝転覆www復讐ここに極まれり。原作外伝1巻を見ると宮廷闘争上等wなロイエンタールも案外ノリノリ?でも長男フェリックス(16歳)はそんな父母を冷ややかな目で見つめていそう。

※ミッターマイヤーは原作でも「余計なことに頭を使いたくない」って言ってたけど、ここのミッチはどうするのかしら。

ゆうやん (07/28 21:16) 編集・削除

ヒルダたん・・・そりゃぁねぇ。キレますわ。
それほどの大嵐が吹き荒れるのか。gkbrしつつ続きを待ってます

Jeri (07/28 21:35) 編集・削除

>べるさん
この状況で怒らない人っていないと思いますw
ヒルダのそもそもの間違いは、ああゆうシチュでラインハルトと結ばれ、元々恋愛にも結婚にも関心が薄かったラインハルトにとって、周りに他に女性がなかったので、選択肢が極端に狭かったことだったと思ってます。
「あの二人は、ラインハルトの寿命がもう少し長ければ、結婚しない方がお互いよかったのではないか?」という新説を披露してみました。

>葉子さん
元々男性読者なんて想定してませんので、その点では思いっきり外してます。
ただ、これまで読んだ銀英の二次で、女性が書いたもので男性に凄く受けそうなのってあまり見たことがありません。舞台観に言っても客の95%は女性なので、この際思い切って切り捨ててます。
>『****できれいになる銀河帝国』
****に入る言葉を考えただけでも男性読者なんて蚊帳の外ですw

>ゆうやんさん
さあ、これから本領発揮。
大粛清が始まります。
こうご期待!www

葉子 (07/29 01:05) 編集・削除

嵐(大粛清)の前の静けさ…。
>>男性読者
こないだの二次創作叩きのときに感じたのですけど、男性作者&読者は「シミュレーション系(ゲーム同様、自分が提督になって敵を撃破!)」、一方、女性作者&読者は「人間ドラマ系(愛と友情と時々宮廷闘争w)」が好きなようですね。同じ原作でもこんな風に男女差がでるのはちょっと面白いかも、と思いました。そりゃ話がかみ合わないわけですw

リセット-寂寞の皇后-(3)

皇帝夫妻は、柊館を新たな仮皇宮として新婚生活を始める。
アンネローゼを頼り、フェザーンの大学に入学する為にやってきたキル子(仮名w)は、シャフハウゼン子爵夫妻、ヴェストパーレ男爵夫人や従者達と共に、ラインハルトがアンネローゼと暮らす為に用意した元の邸に住むことになるが、皇帝夫妻とも頻繁に行き来していた。
普段は、穏やかなキルヒアイスに似て、皇帝夫妻や大公妃始め目上の者に対しても礼を欠かさない態度をとっているが、先取の気風に富んだ奔放な一面もあり、しばしばラインハルトでさえも面食らわされる。
この不思議な魅力を持った少女は、あっという間に皇帝姉弟の中に溶け込み、時にヒルダでさえ入っていけないと感じるほど、短時間に親密度を増していった。
ラインハルトとヒルダが、未だに公式非公式の場を問わず「陛下」「カイザーリン」と呼び合っているのに対し、ラインハルトとキル子は、気づけば公式の場以外では、互いを「ラインハルト様」「キル子」と名前で呼び合う仲になっていた。
アンネローゼは、不治の病に罹ている弟の為、免疫力を高める料理のレシピを頻繁に考案しては自ら厨房に入り、キル子を助手にしてラインハルトの食事作りを日課としていた。
ラインハルトにとっては、宇宙一である姉の料理を毎日食べられることで、徐々に症状が緩和し、発熱の頻度も下がっていった。
やがて、新帝国歴3年5月14日、地球教徒の残党が暗躍する中、予定通りの展開でケスラーが大活躍する形で、ヒルダは、第一皇子アレクサンデル・ジークフリードを出産し、皇太子の母として皇后としての地位は盤石のものとなる。
フェザーンにいたラインハルトも、大本営からすぐに病院に駆け付けて、出産直後のヒルダを労い、息子との感動の対面を果たす。
再び新たな仮皇宮に移った皇帝夫妻だったが、ヒルダは、本来ラインハルトの崩御の日である6月29日が無事過ぎることを只管祈った。
ラインハルトは、早期治療の甲斐あって、後に皇帝病と称される『変異性劇症型膠原病』は小康状態を保っていたが、この日は久々に微熱を発して大本営への出仕を控え、仮皇宮の自室で決済の書類に目を通していた。
そんな折り、地球教徒の最期の残党が、皇帝とその親族の命を狙っているという情報をオーベルシュタインがキャッチしていた。
狙われる対象者は、皇位継承資格がある皇帝夫妻と皇太子、皇帝の姉のグリューネワルト大公妃の4人と思われていたが、大公妃と同居するキル子や友人のヴェストパーレ男爵夫人やシャフハウゼン子爵夫妻にも危険が及ぶ可能性がある。
この日は、アンネローゼが、ラインハルトの為に下ごしらえした薬膳料理を持って仮皇宮を訪れていたが、オーベルシュタインは、逆にそれを利用して、皇帝がお忍びでアンネローゼが居住する館に密かに行幸しているとの偽情報を流していた。
ラインハルトは、この頃には密かにキル子を意識し初めていたが、既にヒルダを生涯の伴侶と定め、旧王朝の一夫多妻制度を嫌悪している身で、自分の気持ちを抑え込んでいた。キル子の方もラインハルトを慕っているものの、既に結婚し、皇子まで儲けた后のいる皇帝の彼に対して、それ以上の感情を持ってはいけないのだと自分に言い聞かせていた。また、自分によくしてくれるヒルダを裏切りたくない気持ちも強かった。
そのような事情で、この日、キル子は理由をつけてアンネローゼに同行していなかったのだ。
オーベルシュタインから地球教徒残党の動向を知らされたラインハルトは、咄嗟にキル子の身を案じて、周囲の制止を振り切って単身仮皇宮を飛び出し、キル子救出に向かうw(ベタ過ぎて笑ってやって下さい)
一人逃げ遅れていたキル子を防火製の自分のマントで包んで抱き上げ、助け出すラインハルト。二人は、この時、互いの気持ちを確認する。
キル子達は、無事救出されたが、囮となっていたオーベルシュタインが、原作通り命を落とすことになる。
ラインハルト崩御の日を無事乗り切ったことで、ヒルダはリセットを選択してよかったと心から喜び、これから家族3人での幸せな日々を思い描くのだった。
しかし、後にラインハルトが自身の危険を顧みずキル子救出(表向きはアンネローゼの館に住まう全ての人々を心配して)に向かったのを知ったことで、彼の思いを知ることになり、苦悩する。

キル子は、ラインハルトへの思いを封印したままフェザーンの志望大学に合格し、福祉政策を学ぶことになった。
政府要人の夫人の中では、同じ平民出身で、戦災孤児という境遇で共感し合ったのか、エヴァンゼリン・ミッターマイヤー夫人と年齢差を越えて友情が芽生え、すぐに親友となっていた。
その縁で、彼女が名付け親になっているロイエンタール邸にも度々出入りし、フェリックスをあやして遊んだりしているうちに、母親であるエルフリーデとも自然と打ち解けていった。
エルフリーデは、フェリックスを出産し、認知されてもロイエンタールとは結婚する気はないらしく、相変わらず『フロイライン・コールラウシュ(コールラウシュ伯爵令嬢)』と呼ばれることを望んだので、エヴァンゼリンもキル子もそれに合わせていた。
ロイエンタールのことは相変わらずお前呼ばわりで、驕慢な態度ながら、何故か二人の仲は悪くないらしく、邸の使用人達もごく自然に彼女を女主人として扱っているという少し不可思議な情景だった。
「あなたも子供を産めばいいわ」
ある日、子供好きなキル子がフェリックスを抱いてあやしている時、同い年のエルフリーデが唐突に言った。
「それは…いずれはそうしたいと思っておりますが、こればかりは一人では…」
苦笑しながら答えるキル子に、エルフリーデは、ならば皇帝の子を産めばいいと、事もなげに言う。
面白いくらいに狼狽するキル子に、エルフリーデは彼女の気持ちを確信する。
エルフリーデの中のリヒテンラーデ一族の策謀家の血が騒ぎ出す。
『この子を使って、あの利口面したマリーンドルフの女を地獄に突き落としてやろう』
エルフリーデは、一人勝ちして他人の痛みが解らない(ように見える)ヒルダが大嫌いだった。
同時に、ヒルダも皇后である自分に敬意を払っていないことがありありと判るロイエンタールと不可解な関係を続けるエルフリーデを流石に態度にこそ出さないが、内心で嫌っていた。
エルフリーデは一計を案じると、その夜、珍しく自らロイエンタールの寝室に向かった。
「お前に頼みがあるわ」
人に頼み事をする態度とは思えない言い様に、ロイエンタールは苦笑するが、エルフリーデに関しては何故かそれが不快ではない。
「頼まれてやってもいいが、内容と報酬によるな」
「お前にとっては、別に難しいことではないわ。報酬は、今払うわ」
そう言って、はらりと夜着を脱ぎ捨て、全裸になったエルフリーデを、ロイエンタールは無造作に腕を掴んでい寝台へ引き入れた。

程なくして、宮内省から皇帝の名に於いて、キル子を亡きキルヒアイス大公の妹として大公女の称号を授与し、皇族の待遇を与えるという詔勅が出された。
これは、単に彼女の身分を上げたというだけでなく、皇族が極端に少ないローエングラム王朝に於いて、公務を担う皇族格の人間を増やしたいという宮内省の意図があった。
キル子に与えられた最初の公務は、フェザーン回廊に近い辺境惑星に建設された戦災孤児収容施設の視察だった。
「一光年以下のことには無関心」な皇帝と、彼とほぼ同じ感覚を有する皇后よりも、彼女のような平民出身の少女の方が相応しいとの宮内尚書と彼にこの件を働きかけたある軍首脳のお膳立てだった。
現地に到着したキル子は、スケジュールを大幅に超過して、親身になって自分と同じ境遇の戦災孤児やその世話をする職員達の話を聴いた。
そして、最後は、皇族としての威厳を以って、彼等に前向きに生きるようマイクに向かって訓示する予定だった。無論、その為の原稿も用意されていた。
しかし、壇上に立った時、キル子は父の戦死の報を受けた時のことを思い出し、涙が溢れて言葉にならず、結局一晩かけて暗記したはずの原稿を一行も読み上げることができなかった。
仕方なく、お付きの者の機転でその場を切り抜けたものの、初公務は大失敗に終わり、帰還の艦の中で教育係の女官から散々に説教されることになってしまった。
しかし、このキル子の態度は、視察を受けた人々から思わぬ好感を持って受け入れられた。
「大公女様は、私達と同じ悲しみをご存知だ」
「大公女様は、私達と同じ目線で戦災孤児の将来を考えて下さっていた」
「大公女様は、とても親身に私達一人一人と話をして下さった」
このエピソードは、同行した護衛の兵士達からフェザーンにも伝わり、間もなく帝国中に知れ渡ることとなった。
そしてついには、「あのような方が皇帝陛下のお妃になって下さればよかったのに」という声まで上がるようになったのだった。
今の皇后陛下は、皇帝陛下の覇業を助け、比類なき智謀の持ち主である。しかし、所詮門閥貴族のお姫様には違いない。宇宙の塵と化して還らない無名の一般兵士の家族の気持ちなど理解できるはずがない。
しかも旧王朝末期の政変では常に勝者側にいたので、敗者の悲哀も味わっていない。
そうした市井の声は、ヒルダの元にも届くようになっていた。
一方で、ラインハルトのキル子への思いは日に日に募るようになり、執務中も考え込むことが多くなった。
このままでは、持病にも影響しかねないと判断したヒルダは、ある日、意を決して夫に持ちかける。
「どうぞ、陛下。キルヒアイス大公女を寵姫にお迎え下さい。そうなされば、陛下に対する国民の支持も更に上がりましょう」
ヒルダは、賭けに出た。
案の定、後宮というものを誰よりも嫌悪している皇帝は、即座には承知しなかった。
「何を言うのだカイザーリン。予は、ゴールデンバウム王朝の淫蕩な皇帝達とは違う」
自分への愛情からではなく、旧王朝の皇帝と同列に見倣されるのを嫌う理由で拒否するラインハルトに、ヒルダは軽い失望を覚える。
「後宮を作って大勢の美姫を集めるのではありません。愛する女性を妻に迎えるのです。淫蕩とは違います。人として恥ずべきことではございません」
ヒルダは、それでも内心ではラインハルトが拒絶することを期待していた。
同時に、自分は常にこの方にとって、最も良き理解者であり、公私ともに最も役に立つ存在でなければならないとも考えていた。それこそが、この方にとっての自分の唯一の存在意義なのだと思っていた。
だが、ラインハルトは、ヒルダの細い望みを繋いではくれなかった。
「…カイザーリンは、本当にそれでいいのか?」
「もちろんですわ。陛下の御心が安らかであることが、私の一番の願いです。きっと私の足りないところを、キルヒアイス大公女が補って、陛下の更なる助けとなることでしょう」
死刑宣告にも等しい思いで夫の言葉を聴くヒルダだったが、辛うじて皇后としての矜持を守って返答した。
それに対して、ラインハルトは、欲しい玩具を買うことが許された幼児のような表情で笑を返す。
ヒルダには、その微笑がこの上なく残酷なものに映った。
「わかった。カイザーリンがそこまで言ってくれるなら、キル子を寵姫としよう。だが、これだけは信じて欲しい。予の皇后は、あなた一人だ。そして、予が寵姫を迎えるのは、これが最初で最後だ」
ラインハルトにしてみれば、ヒルダを気遣って言った言葉だったが、ヒルダにしてみれば、かえって辛い宣告だった。
キル子が、大勢の愛妾の中の一人に過ぎず、自分が唯一の正妻だという状況なら、自分の中で割り切ることもできる。
しかし、皇后以外に、彼女が傍に置く唯一の女性だと宣言されると、女としての自分が否定されたに等しい思いがした。
そして、ラインハルトの人生経験では、その微妙な女心が理解できなかった。
その夜、お忍びでキル子の元を訪れたラインハルトは、彼女に寵姫になってくれと頼む。いや、寵姫ではなく、新たに「第二帝妃」という皇后に継ぐ皇帝の妻の位を与える。あなたを愛しているので、どうか自分の気持ちを受け入れて欲しいと、心臓が飛び出す思いで打ち明ける。
皇帝としての命令ではなく、愛する女性に対する求愛だった。
今回は、キル子が承知してくれれば、姉にも諮るつもりはなかった。
姉だけでなく、たとえ誰が反対しようとも、この思いを貫く決意だった。
キル子は、自分も同じ思いだとラインハルトに打ち明ける。
しかし、ヒルダを裏切ることはできないと言って、躊躇する。
ラインハルトが、この話はカイザーリンから勧められたものだと言うと、驚いて青い目を見開いた。
そして、それを勧めたヒルダの心情を痛い程理解しながら、結局、ラインハルトへの抑えがたい恋情に抗えず、彼の第二の妻となることを承知する。
強く抱き合い、熱い口づけを交わす二人。
翌日、キル子を第二皇妃として結婚することをラインハルト自らアンネローゼに報告する。
二人の様子を間近で見ていたアンネローゼは、特に驚きもせず、反対もしなかった。
ただ、「ヒルダさんを気遣ってあげて下さい」とだけ言って、二人の結婚を祝福した。
皇帝とキルヒアイス大公女の結婚式は、ヒルダの時とは違い、宮廷内でごく内輪で執り行われることとなり、国民には翌日、政府広報の一部として発表するに留めることとした。
この時期、工部尚書シルヴァーベルヒの指揮の元、ルーヴェンブルン宮殿の建設は着々と進み、まずは皇帝の住居となる皇宮と、皇太子の宮殿である東宮が完成した。戦争を回避し、その分の予算や人員を割けた為、その他の式典用の建物や、それらを繋ぐ道路の完成も、予定より早まる予定だった。
キル子とラインハルトは、新しく完成したばかりの皇宮の一室で、オーディンからやってきたキルヒアイスの両親や、文武の重臣達とその同伴者のみを集めて、簡素な結婚式を行なった。
簡素と言っても、新郎新婦二人の身内の他に、尚書クラスの文官とその夫人達、大将以上の軍首脳とその同伴者達で、200名は越えていた。
国務尚書であるマリーンドルフ伯は、表面上は平静を装っていたが、内心は娘の気持ちを思うと複雑だった。
また、皇帝の病を知る文官の中には、将来の皇位継承争いを懸念する者も少なくなかった。
しかし、逆に軍の中には、かつてキルヒアイスの麾下で共に戦った者も多く、その義妹が皇帝の妻となることを大いに歓迎する雰囲気があった。
特に、キルヒアイスの直属だったことのあるベルゲングリューンやビューローは、話を聞くと真っ先に祝杯を上げ、式の最後には、「大公女殿下万歳!」を大声で連呼して、新宮殿を震撼させた。
また、同じくキルヒアイスの麾下であったルッツやワーレンもこの結婚を喜び、キルヒアイス大公女に対して、忠誠を誓うポーズをとって見せた。
特に、結婚したばかりのルッツ夫妻は、慣れないフェザーンで、これから皇族として大任を果たさなければならない大公女の為に、妻のクララが、女官として仕えることを申し出て、許可されていた。
ラインハルト側の身内からは、アンネローゼとヴェストパーレ男爵夫人、シャフハウゼン子爵夫妻が出席したが、ヒルダとアレクは、流石に場の雰囲気を考慮して出席を見合わせた。
エルフリーデが、してやったりという顔で、ロイエンタールの腕をしっかり組みながら、相変わらず豪華な装いで注目を浴びていた。
こうして、結婚式を終えたラインハルトとキル子は、新たな皇宮で初夜を迎える。
初めて愛する人と結ばれた二人は、幸せだった。
ラインハルトは、暫しヒルダのことを忘れて、キル子との官能の世界に没入していった。
新たな皇族を迎えたローエングラム王朝だったが、ヒルダは、周囲の空気を敏感に感じ取っていた。
ラインハルトも、彼の戦友である軍首脳も、結局のところ、どれ程皇帝の為に尽くしてこようとも、門閥貴族出身の自分よりも、キルヒアイスの縁者に親しみを覚えるのだということを痛感したのだった。
ヒルダは、ここは一旦、引くべきと悟った。
自分は皇后であり、皇太子の生母である。
たとえ何者であろうとも、自分さえ皇帝に忠実でありさえすれば、その地位を脅かす者はいない。
また、ラインハルトのような男の前で、女の嫉妬心を剥き出しにすることの愚かさも、充分に心得ていた。
ヒルダには、バーミリオン会戦で彼を救い、それがなければ、ローエングラム王朝は存在しなかったという自負があった。
キルヒアイスへの贖罪の思いを未だに引き摺っている若いラインハルトが、たとえ一時的にその面影を持つ女性に惹かれたとしても、最期に彼が帰る場所は自分以外ないと確信していた。
何と言っても、彼にとって、自分が最初の女なのである。
ヒルダは、夫にとって「宇宙一良く出来た妻」であろうと誓っていた。
そうすれば、必ず最後に勝利するのは自分だと。
何故なら、自分は次期皇帝の母なのだから。
そう考えたヒルダは、自ら望み出て、自分は普段は、アレク皇太子の教育に専念する為に東宮殿に住まい、ラインハルトは、新皇宮で第二帝妃とグリューネワルト大公妃と生活を共にするよう提案し、許可された。
こうして、皇帝は、公の場では皇后ヒルダの補佐の下、政務に励み、私生活では第二帝妃と暮らすという形を作った。
ヒルダは、自分なりに区切りを付ける意味で、結婚以来、少し伸び始めて後ろで束ねていた髪をまた昔の秘書官時代と同じショートカットに切り、服装もドレスは式典以外では着用せず、以前のパンツスーツスタイルに戻して皇帝の政務を補佐した。
ヒルダの唯一の誤算は、一度に複数の女性と性生活を営むことを旧王朝の皇帝の如き淫蕩と決めつけているラインハルトが、キル子と結婚以来、ヒルダとの性的関係をきっぱり絶ったことだった。
彼の「カイザーリンは本当にそれでいいのか?」という問いの中に、そのことも含まれていたことをこの段階になって初めて知るヒルダは、毎夜孤閨を守りながら眠れぬ夜を過ごしていた。
しかし、「私のことも抱いて下さい」とは口が裂けても言えない性分の彼女は、次第に睡眠導入剤や精神安定剤に頼るようになっていく。
ラインハルトの方は、まるで枷が外れたように、毎夜キル子との愛欲に没頭し、初めて性の奥深さに目覚めていった。
二人は次第に快楽の深め、遂にその極限に達することになる。
「やっとわかったわ…フロイライン・コールラウシュの言っていたことの意味が」
一晩中抱き合って、二人で朝日を見詰めた時、キル子がぽつりと言った。
「何がだ?」
裸の背中を抱くラインハルトが、キル子の赤毛を指に絡めながら問う。
「身体が繋がると、心もより深く繋がる人達もいるって。全員じゃないけど、私達はそうみたい…」
「そうだな…」
ラインハルトも頷く。
そのフロイライン・コールラウシュは、事実上ロイエンタールの妻の座にあるにも関わらず、この時も結婚する気配はなかった。
公式の場でも、相変わらずの高慢な態度で、帝国元帥を従者のように扱っているのは、今や新帝国の名物の一つと言われている。
しかし、その伯爵令嬢が、現在ロイエンタールの第二子を懐妊中だというニュースがつい先日流れた時は、帝国中が大騒ぎだった。驚きだとコメントする者もいれば、案外当然の成り行きだと言う者もいる。
「私も…妊娠したみたい…」
キル子の思わぬ言葉に、一瞬ラインハルトは、アイスブルーの瞳を見開いた。
「そうか…では、ロイエンタールの子と同級生になるわけだな」
やがて、しっかりとキル子の身体を抱きしめ、懐妊を祝福するラインハルト。
キル子は、その胸の温かさに、幸せを噛み締めていた。

第二帝妃懐妊のニュースは、妊娠が7週目に入ると、帝国中に発表された。
喜びに湧く街の映像と、嬉しそうに談話を発表する夫とキル子の映像をソリヴィジョンで交互に見ながら、ヒルダは、このリセットが本当に自分にとってよかったのだろうかと自問自答する。

コメント一覧

べる (07/27 09:13) 編集・削除

ラ……ラインハルト!貴様っ!!!!
これじゃヒルダたんは黒くならざるを得ないわ。

そんで、エルたんがこれまた真っ黒w

しかし、ミタマイヤよ,
君はどうする?
(と、べるちん、wktk)

葵猫 (07/27 09:31) 編集・削除

うわ、ヒルダ可哀想すぎ…
しかしロイの非好意とか、エルちゃんの逆恨みとかは、問題にもなりませんね。
カイザー、なんつう鈍感!
里中満智子のライフワーク、天上の虹の、持統天皇の孫が似たようなことやって、尽くしてくれた第二婦人が精神病む話がありましたが、あちらは十代の、そとの世界一切知らない皇子様ですからね。
いくら奥手ったって、それはないでしょう、ラインハルト。

ゆうやん (07/27 10:03) 編集・削除

ラインハルト~!!
これヒルダを黒化するというよりラインハルトも黒化(本人無自覚だけど)限りないような。
朴念仁にもほどがある。

あ、べるさんの言うとおりミッちゃんだけはどうしてもこの状況を受け入れなさそう。ってか受け入れないときっとこの後の展開が面白い(そっち?)

この後どんなどろんどろんな展開が待っているのか正直wktkしますね~

葉子 (07/27 12:52) 編集・削除

>>『この子を使って、あの利口面したマリーンドルフの女を地獄に突き落としてやろう』
やっちまいなさい。あなたにはそこまでやるだけの権利があるよ…。そして贅沢三昧でロイエンタール家の資産を食い潰して、こちらの方にもしっかり「復讐」を忘れない。さすが『不逞きわまる陰謀家(byロイエンタール)の末裔』だわ、エルフリーデたんwww
ナイフ一本で特攻するだけあって、覚悟が違うというか、流石でございます。お嬢さま。

で、…私でもここまでヒルダに鞭打ちませんよ、Jeriさん(汗)。

前に「ライヒルはごっこ遊びで恋愛ではない」といったようなことを書いたと思うのですが、あれは、ラインハルトとヒルダは清潔感を出したいがために、田中先生が性(≒セックス)をにおわせる要素をことごとく排除しちゃった結果、人間らしさが消えちゃったので、これはちょっと盛ってると思いますが、このくらいあったほうが逆に自然かも…。
エルフリーデとロイエンタールには「ヒルダにかましたれ!」って発破かけますが、その一方でヒルダが気の毒になってきましたよ…。アレク陛下のお母さんという「唯一の存在価値」すらむしりとられるとは!
※私がこの展開でラインハルトに転生wしたら、邪魔なヒルダを毒殺しちゃうんですけど、こちらのおハルさんはどうするのかな?

…人間、業が深いのねwww

葉子 (07/27 13:32) 編集・削除

連投失礼します。
>>夏コミ1日目
ではレポ上げさせていただきますね~。
恥ずかしながら、我が家の年中行事なのです(うちはオタク夫婦)w
参加者人口は増え続け、比例して取り扱いジャンルが広くなりましたが、会場が増床するわけではないので、一作品あたりのサークル数はどこも減らしているようです。
今回の銀英はページ半分。ブレイク時の1989年夏~1991年冬くらいまでが4ページ(もうすこしあった?)くらいあったので、20年以上前の1割強でしょうか。もし、99年のらいとすたっふの「草刈り」がなかったら、もう少し残ったのかも…。

Jeri (07/27 17:14) 編集・削除

「キル子」って名前何とかなりませんか?
とのメールや拍手メッセでのご意見ですが、何ともなりません。
元々名前などどうでもいいので、お読みになられる方が、お好きな名前を脳内変換して下さい。

>べるさん
>これじゃヒルダたんは黒くならざるを得ない
そうそう。
意味も無くいきなり黒化するヒルダを投稿サイトで読んで違和感を覚え、逆に、あのヒルダが黒化するとすれば、「これなら仕方ない」くらいの理由がなければと考えたんです。
ミッタは、どうするか?
なんせ、エヴァとキル子が親友ですからねぇ…
ミッタも所詮平民、門閥貴族出身の皇后より、同じ平民で、キルヒアイスの親族で、妻の親友の方に最後は傾くのではないでしょうか?

>葵猫さん
ロイがヒルダに非好意的なのは、原作準拠なので仕方ないですw
エルちゃんが立場上、「あの女の一言で私は…」という気持ちになるのも有り得るでしょう。
あと、ラインハルトって、本当にこの手のことに関しては、このくらいの鈍感男だと思ってます。
元々軍の中しか世の中を知らないのは、天上の虹の文武天皇(?)と同レベルかも。

>ゆうやんさん
お言葉ですが、ラインハルトって、そもそも原作からして黒くないですか?
だって、戦争したい理由が、国を守る為でも愛する人を殺された恨みでもなく、「ヤンとどっちが用兵術で優れているか確かめたい」なんですよ。
ミッちゃんがこの状況をどう感じるかですが、いくら軍首脳とはいえ、まさかカイザーの私生活がの細部まで知らないでしょうし、表面上、皇帝、皇后、寵姫がそれぞれの役割をきちんとこなし、納得した上で生活しているなら、臣下として口を挟む余地はないでしょう。

>葉子さん
今のところ、ヒルダをいじめているように感じる展開かもしれませんが、これ、リセットもの、つまり「ヒルダがパラレルの世界を体験している」に過ぎないものですから、最後はちゃんと元の世界に戻りますので、ご安心下さい。
が、パラレルを見てしまったヒルダが、元の世界に戻っても同じ人格である保証はありません。
これ、「もし、ヒルダが黒化するとしたら、このくらいのことがなければしないだろう」というのがベースになってる話ですから。

ごん (07/28 00:33) 編集・削除

お晩です。
なにやら鉢巻しめて割烹着着て料理に必死になる大公妃が見えるような(爆)

ベルゲンはともかく、熱狂するビューローてのもすごい風景(同人イメージ的にビューローって覚めてる印象が強いので)キルヒアイス元帥府ってあったら面白かったですね。ほとんど手堅い系でまとまってて。

>たくさんいる妾のうちの一人なら良かったのに。
病人にそれを求めてはいけません(爆)

ヒルダ……夢から覚めたらそらもうブラックホールですな。きっかけになった作品書いた人は、ラインハルトに与したからヒルダが気に入らない、というだけのようでしたが。

パライバの話、ありがとうございました。ほんと九賽溝というか海の色みたいなきれいな宝石ですよね。
色によって呼び名が変わるのはルビーとサファイア、エメラルドとアクアマリン(だっけか)とか色々ありますけど。そういうこときっかけにお友達が出来るJeri様がうらやましいです。

Jeri (07/28 03:22) 編集・削除

>ごんさん
私も熱狂ビューローはちょっとないかなと書いた後で思いました。まあ、ベルゲンに誘われて酒盛りしてるうちにテンション上がっちゃってということでw